恋に落ちた海賊王
□アネモネ
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「おい」
不意に声を掛けられ、煙草を落としてしまった。
余りに驚いたので、鼓動が速まる。
「ガキの癖に煙草なんて吸いやがって」
「シンさん、驚かせないで下さいよ…びっくりしました」
「俺の方が驚いた。ちんちくりんのガキが煙草を覚えたなんてな」
「初めて吸いました…不味いですね…それに、余計ナギを思い出してダメみたいです」
私は落とした煙草を拾い、ベランダに設置されていた灰皿へ入れた。
中に水が入っていたらしく、ジュッと火が消える音がした。
「煙草を吸って鬱憤晴らす位なら、お前も男に抱かれて来い」
「ちょっ、何言ってるんですか!大体、ナギが娼館に行ったとは限らないし…」
ナギを信じたい気持ちと、絶望が混じり合う。
もし酒場で飲んでいるにしても帰りが遅すぎる…
海軍に捕まった?船長とナギがそんなヘマをする筈がない。
「だが、仲直りもしてないんだろ?」
「はい…」
「なんなら、俺が抱いてやろうか」
その瞬間、シンさんがふわりと宙を舞って隣のベランダから飛び移って来た。
あまりにスマートにこなすものだから、思わず見とれてしまう…
ベランダから部屋へと押し倒されて我に帰った。
「シンさん、止めて下さい!」
「いつナギが帰って来るか分からない部屋でヤるなんて、ゾクゾクするだろう?なんならオプションで縛ってやろうか」
シンさんが私の首筋に舌を這わせる。
ゾクゾクとした感覚が頭の中に沸き起こるけれど、ナギとの行為とは違うーーー
「そんなオプション要らないし、抱かれませんから!私は待ちますっ、例えナギが他の女の人を抱いていても、私を嫌いになっても…」
「ククッ、やっとらしくなったな」
シンさんは笑うとポンポンと私の頭を撫で、私の額にキスをすると、手に何かを握らせてまたベランダに戻って行った。
「ガキはガキらしく、煙草なんて吸わないで、それでも舐めてろ」
手を開き握らされたものを見れば、可愛い包装紙に包まれたキャンディーがあった。
「抱かれたくなったら、いつでも部屋に来い」
お礼を言おうとしたけれど、シンさんはまたベランダを飛び越えて、さっさと部屋の中へ戻って行ってしまった。
月を眺めながらキャンディーを一つ口の中へ入れる。
甘い匂いと味が口いっぱいに広がる。
シンさんはドSだけど優しい…
ナギが帰って来たら、きちんと逃げないで話をしよう。
シンさんが背中を押してくれたから、大丈夫。
シンEnd...