恋に落ちた海賊王

□アネモネ
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「うわゎわわわわ?!ソウシ先生とシンさん、名前さんに何してるんですか!」


トワ君が食堂に入って来て、ソウシさんに抱き締められ、シンさんに頭を撫でられている私を見て慌てている。


「ナギさんに卸されますよ!」


ナギーーー
名前を聞いただけなのに、また目頭が熱くなる…


「トワ…いや、下っ端は俺に撃ち抜かれたいらしいな」

「撃ち殺されたい奴なんかいませんよっ!シンさん今、僕の名前呼んだのに、わざわざ下っ端って言い直しました!?」

「最後に言い残すのは、それだけか?」


シンさんがカチャリと銃を懐から出して構える。
ソウシさんが眉間に皺を寄せてシンさんを睨んだ。


「こら、シン!止めないか」

「チッ、トワ…命拾いしたな」


シンさんが銃を仕舞い、トワ君がホッと肩を下ろす。
私は到堪れなくなって、ソウシさんとシンさんの手を摺り抜け立ち上がった。


「食欲が無いので、少し部屋で休んで来ますね」


私は皆の返事も聞かずに小走りで部屋へ戻った。
部屋に入ると、もうすぐに近付く闇に包まれつつある。
灯りも着けずに声を殺して泣いた。

意地なんか張らなければよかった。
もっと早く素直に
謝ればよかった。
好きだと、愛していると伝えればよかった。
娼館で他の女性を抱いたナギを許せるか解らない…
こんな風に終わりたく無かった。
愛しているのに…明日が見えないーーー


泣き疲れて眠ってしまって居たのか、気が付くと暗闇の中に居た。
なんとか手探りでランプに灯りを着ける。
灯りを着けると、ふとテーブルの上にあったナギの煙草が目に付いた。

私は煙草を持つとベランダに出てマッチを擦り、煙草を銜え火を着けてみた。

スっと煙草を吸い込むーーー
途端に広がる独特の匂いと苦味にナギとの口付けを思い出す…
ニコチンが身体に広がって来たのか、指先が痺れ頭がクラクラして来た。


ナギ…会いたいよ。

今、何処に居るの?








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