恋に落ちた海賊王

□ロンリーロンリー
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私がシリウス号を降りる日が決まった。
始めの頃は、こんなに自分が海賊船に馴染むだなんて夢にも思わなかった…
それなのに今はシリウス号を降りて、ヤマトで元の様に暮らす事が想像出来ないでいる。


ロンリーロンリー



「名前ちゃん、此処に居たんだ」

「ソウシさん…」

「今夜の宴の主役が居ないと私が盛り上がらないよ」


甲板からは聞きなれた皆の声。
ソウシさんの本気とも冗談とも取れないその言葉に一瞬、私の回りだけ静寂が訪れた。


「ナギは…一緒に降りないの…?」

「はい…」

「そうか…私なら名前ちゃんとの平凡な日常を選ぶのに」


ソウシさんの細い指が私の髪を梳かすように撫でる。ナギとは違うその感触に私は戸惑いを感じた。


「ドクター…俺の女、口説くの辞めてくれませんか?」


突然、現れたナギに胸が高鳴る。
それと同時にソウシさんと二人で居た事への少しの罪悪感が私の胸を締め付ける。


「おや、もうナギの彼女じゃなくなるんだろ?
でも…名前ちゃんが望んで居ない様だから私は退散するよ」


そう言うとソウシさんはクルリと踵を返し、賑やかな宴へと戻って行った。


「名前」

「ナギ…」


ナギはすかさず私を抱きすくめると私の存在を確かめるかの様に逞しい腕に力を込めた。
私もナギの背中に腕を回して、その体温を確かめる。


「ナギ…私の事、愛してるんだよね」

「ああ…」

「なら大丈夫、約束なんかいらない」

「名前…」


ナギは海賊だもの…
明日の命さえ解らない彼に約束をさせるのは酷過ぎる。

すまない、と消えそうな声で繰り返すナギ…
この想いだけで私は明日から生きていける。

同じ明日を見れたら…
同じ夢を描けたら…

大丈夫、世界は海と空で繋がってる…


「ナギ…宴に戻らなきゃ…」

「もう少し…」

「うん、そうだね」


夜風が冷たくなって来た。
だけど、ナギの体温が一際際立て、凄く心地が良い…


夜空に輝くシリウスが悲しい。
どうか、このまま時間を止めて欲しい…

ロンリー、ロンリー…
今だけは泣くな私。





end…
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