悲恋歌―あの空の彼方に―

□別れた道
2ページ/5ページ

食材を食事の当番の隊士に渡し、舞華は自室でくつろいでいた

今日も午後から巡回に同行することになっている
今日の担当は、平助だった筈だ





「――それじゃあ、行くか!」

八番隊の隊士も全員揃い、巡察に出かける
昨日とは打って変わり、今日は雲一つない快晴だ


「――ああ、舞華ちゃん!いらっしゃい!
沢山買ってもらっちゃって……毎度毎度ありがとね」
「お!舞華ちゃん!
今日も巡察かい?ご苦労様だね」
「舞華ちゃん、この間はありがとね!
おかげさまで新商品が沢山売れたよ!」

「……いつも思うけどさ、舞華って人気だよなー」
「え?そうかな?
みんないい人だから、覚えてくれてるだけだと思うけど……」
「いや、なんかさ、慕われてるっていうか……」

舞華は、不思議とそういう魅力があった
だから、新撰組にも、この時代にも馴染めたのだと思う

いつも、笑顔だからだろうか

――この笑顔があるから、オレ達は頑張ろうと思えるんだよな

まあ、それはこの町の人も変わらないのかもしれない

「お前、すげえよな……」
「え?」
「いや、いつも笑顔だからさ」

「それなら、平助君もだよ
いっつも話すときは笑顔だもん
平助君の笑顔で、私も頑張ろうって思えるんだよね!

……って、平助君、顔真っ赤だけど大丈夫!?」

「おまっ……それは不意打ち過ぎる……」
「え?えっ、大丈夫!?」
「ゆ、夕日のせいだ!」
「まだ日は高いけど……」
「日焼けしたんだよ、日焼け!」


たわいのない会話






――もうすぐこの笑顔を壊してしまう日が、必ず来る

オレは、舞華の笑顔が曇るのを望まないし、できればずっと一緒にいて、守ってやりたい

だけど

オレは、その道を選ばない



だから、今だけでもいい

「――なあ
もし……もしだけどさ、
オレが新撰組から離れていくことになったら、舞華はどうする?」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ