悲恋歌―あの空の彼方に―

□洛陽動乱
2ページ/10ページ

元治元年六月五日

「――会合場所は池田屋か四国屋ですか……」
「ああ
ここまで絞れたのはいいが……問題はどちらが本命か、だな」
広間に集まった幹部達の中で山南と土方の声が響く

……池田屋事件
後にこう呼ばれるこの事件は、新撰組の名を天下に轟かせる事件だ
確か、新撰組は賭にも近い出陣をする

「では、近藤隊は池田屋に」
近藤、沖田、永倉、藤堂の四人が頷く
「土方隊は四国屋に乗り込んでください」

……本命は、池田屋
しかし、ここでの判断は、四国屋を本命としたものだ

舞華は勿論この事件がどういう風に進むかを知っている

だから、迷っていた

……このまま近藤さん達を池田屋に行かせたら、平助君や沖田さんは……

誰も、傷つけたくない

でも、それが歴史

「……おい」
「はい……、何でしょうか?」
「お前は屯所待機だ、いいな?」
「はい、分かりました」
土方さんに屯所待機を命じられて、安心してしまった私が嫌だった
でも、伝えなきゃ
「平助君!」
「ああ、舞華
どうした?」

さあ、言うのだ

「頑張ってね!」
「おう!」

……あれ?
そうじゃなくて!
「――…!?」
声が、出ない
このままでは、と頭では分かっているのに、体は全くいうことを聞かない
もしかして、歴史を変えないようになってるの!?
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ