悲恋歌―あの空の彼方に―
□託された未来
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「何!?将軍がいないだと!?」
大坂についた私たちは、まず近藤さんのいる所へと向かった
そこで待っていたのは、信じられない事実だった・・・・・・
「ああ、トシ達がここに来る少し前の事だ
将軍様は江戸へ向かわれた」
「おいおい!
戦の途中で総大将が逃げ出しちまったのかよ!」
近藤さんの言葉に、永倉さんが怒りを露にした
だけど、皆も思っていることは同じ
――将軍が、逃げた
突き付けられた真実は、今の戦況からいうと堪えきれないものがあった
私たちは、置いていかれてしまった・・・・・・
「・・・・・・まあ、あまり上様を責めるな
上様も、お考えあっての事だろう」
「まあいい
俺たちは俺たちでここで戦うぞ」
幕府の本陣が引いてしまってもここには食料も弾薬もある
そう言った土方さんに、また別の声が答えた
「――いいえ
ここには弾薬も食料も人員もありませんよ、土方君」
懐かしい、声
でも、彼がここにいるはずがない
だって彼は左腕に怪我を負って、国に帰ったのだから・・・・・・
「山南さん!?
どうしてここに・・・・・・!」
しかし、予想とは裏腹にそこに立っていたのは
まさに、山南敬助その人だった――