悲恋歌―あの空の彼方に―

□君がいて
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伊東派に付いて、平助と斎藤が新撰組を去った後、御陵衛士の人とは交流禁止が言い渡された

慶応三年、六月

「――おはようございます、沖田さん」
「おはよう、舞華ちゃん
どうしたの?そんなところで」

舞華は、縁側でぼんやりと外を眺めていた

「いえ、ただ、昔が懐かしくなっただけです」
「そっか
舞華ちゃんが新撰組にきて、もう五年がたつんだもんね
そういえば、今年で歳は幾つになるの?」
「えっと……
もう、21ですね……!
気が付かない間にこんなに歳をとったみたいです」

確かに沖田の言うとおりだ
神社の境内で土方さんと出会った
もう、あれから五年

帰れる方法を探す事よりも、今を生きることが楽しくて、すっかり忘れていた


「舞華ちゃん、もうこっちで結婚しちゃったら?」


……はい?

ケッコン……?

「――って、ええっ!?」

「うん
だって、舞華ちゃんは今を生きてるわけだし
元の世界じゃなくてさ」
「それはそうですけど……
私なんかを嫁に貰って下さる物好きな男性はそういませんよ……」

なんか、自分で言ってて悲しくなってくる
この時代は、恋愛結婚の時代じゃない

だからこそ、難しい問題だった

「……ふうん……僕って物好きなのかな」

「え?えっ、どういう意味ですか?」
「舞華ちゃんを好きになる男が物好きなら、僕もその類かなっていう意味」

それって……

「もう!沖田さん!
からかうのはやめてくださいよっ!」

「――別にからかったわけじゃないんだけどね……」

何か沖田がぼそぼそ言っていたが、よく聞き取れなかった


……何だったんだろう?
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