悲恋歌―あの空の彼方に―

□始まりの記憶
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待つこと半刻
舞華はようやく部屋から出してもらい、広間へと向かった

「……お前は、新撰組預かりになった
ここで、きっちり元の時代に戻る方法を探してもらう」
土方が告げるのを聞き、正直安堵した
新撰組預かりにならなかった場合、右も左も分からないこの世界に放られるのだ
流石にそこまで順応は出来ないだろう
「で、だ
お前、剣術は学んだことはあるか?」
「え……
いえ、ありません」
剣術って!
私達の生きてる時代では、民間人が剣術を心得ている事がありえない
「では、巡回に同行することは認められませんね」
壁際に寄り掛かっていた男性―確か、山南っていう人だった―が、はっきりとした口調で言い切る
「うん、まあそれが妥当だよね
京の町は最近危険だし」
沖田さんが同意する
しかし、私が外に出られないのであれば、帰る方法を探しようがない

「あの……」
「何だ」
「薙刀ができます」

………。
皆が唖然としている
……酷くない?
そんな珍獣を見るような目で見なくても……
何も特技がなさそうに見えて、実は薙刀では府一位である
……だからちょっとくらい授業サボってもひどく怒られないのだ
「薙刀……」
土方が、見極めるように舞華を見る
暫くの間、沈黙がおちた
「……分かった
俺が取り寄せよう」
そう言って立ち上がったのは、今まで話を聞いているだけだった局長、近藤勇だった
「近藤さん!そいつは……」
「いいんだ
彼女は間違った方向には行かないよ
なあ、舞華君」
「はい、近藤さん達を裏切るような真似はしません」
「……分かった
舞華、お前はこれから平助と一緒に行動してもらう」
「お、俺!?」
「ああ
だが、巡回は幹部なら誰に付いていっても良い」
「はい!ありがとうございます!」

……こうして、私の生活は決まったのだった


平助君の「まじかよ!!」という叫び声とともに
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