悲恋歌―あの空の彼方に―

□始まりの記憶
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「――さて、皆に集まってもらったのは、こいつの件だ」

静かな室内に土方さんの声が響く
「で、その子は誰なんですか?
変な格好してますね」
さっき、他の人から総司と呼ばれていた人が発言する
「神社で転がっていた所を保護した……名は?」
言いながら土方さんが質問を投げてくる
「舞華といいます」
「舞華さん、ね
じゃあ舞華さんはどこから来たの?」

「えっと、京都です」

全員が訝しんでいる

「あ、その、現代です……って今が現代なのか」
「お前、大丈夫か?」

土方さんに睨まれる
なんて説明していいかわからないんです
とは言いづらい

「そうだ!元号は平成といって今の時代から……140年くらい後の――」

刺さる視線が、痛い
何を言っているんだ、この子供はという目をしている

「……つまり、未来から来たという事か?」
物静かそうな男性が(たしか斎藤って呼ばれていた)助け船を出してくれる
「はい、そうなります…」
「何故この時代に来た?」
「あの、わからないんです
気がついたら、この時代にいました」
私の返事を聞いて、斎藤さんは押し黙ってしまった

「何かすげえ!」

唐突に声があがる
まだ青年とは言い難い少年だ

「それが本当だったら、これからの事を知ってるってことじゃんか!」
「……本当だったら、な」
和らいだ空気が、一瞬にして冷める

信じてもらえてないんだ

でも、無理もない
立場が逆だったら、きっと私も信じられないだろう

「お前は、少し席を外せ」
土方さんに言われたのを最後に、私は別室に連れていかれた
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