悲恋歌―あの空の彼方に―

□始まりの記憶
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夢を、見た



桜の木の下で女性がが天を仰いでいる
歳は、18くらいだろうか
「――幸せな、夢でした……」
女性の頬に涙が伝う
満開の桜と女性の姿が相俟って至極幻想的だ
そのまま、桜の木に触れる
「どんなに願っても、離れてしまうんですね」
貴方には、もう会えない
これから先、ずっと

悲しげな顔をしながら微笑む


そしてまた、意識は遠退いていった




「……おい、起きろ」
先生、またですか……?
寝かせて下さいよ…
「おい、こんな所で寝てるんじゃねえ!」
――違う
先生じゃない!
「――……!」
慌てて目を開ける
と、目の前には鬼ようなの形相をした男性がいた
「……やっと起きやがったか」
「え……?」
ここ、何処なの?
学校じゃない……しかも床じゃなくて土だし!
「何で辺りを見回してんだ、お前」
「すみません、ここはどこですか?」
「……は?」
どこを見回しても古めかしい建物ばかりだ
まるで……
「寝ぼけてるのか?」
「ち、違います!本当にわからないんです!」
はあ、とあからさまに面倒臭そうな嘆息が落ちてくる
「……神社だが?」
ああ、それは分かる
じゃなくて!
「地名です!地名。」
「京都だ」
京都……?
こんなだったっけ
少なくとも、街の人が刀を帯刀しているような場所ではない
「……って刀!?」
「……さっきから言動がへんだが、お前、服装といい外国人か?」
落とされた言葉に唖然とする
「再びすみませんが、元号を教えていただけますか?」
「元号?そんなもん――」


「文久にきまってるだろ」


……ああ、やっぱり
ここは、江戸時代なんだ
しかも、動乱の多い幕末

「とりあえず、ちょっと来い」

そのまま引っ張られてどこかへ連れていかれる

……まあ、このままここにいても何にもならないから付いていっても良いかな

なんて思った
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