BL
□10.31
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恭弥が気に入っている。
それだけの理由で、日本滞在中に使うのは同じホテルの同じ部屋。
並盛町が一望出来る硝子張りの壁に、適温に管理されている室温、柔らかなベッド。
何もかもが恭弥のお気に入り。
ここ以外のホテルを取ると、恭弥が部屋に来てくれないから今回もこの部屋を取ったというのに…。
何故、俺は今一人なんだろうか。
何だかんだと言いながらも俺に甘い恭弥は、部屋に来て欲しいとしつこく誘えば、大体は恭弥が折れて付いて来るのに、今日は最後まで断られ続けた。
しかもトンファーのおまけ付きで。
恭弥がホテルに来ないのは珍しくない事とはいえ、やはり何だか寂しい。
並中からとぼとぼと一人でホテルに戻ってシャワーを浴びる。
食事をする気にはなれなくて、テレビをつけてみるもすぐに飽きてしまう。
堪えきれずに洩れた深い溜め息に苦笑いしつつ、恭弥に電話でもしてみようかと携帯を開く。
何だか機嫌が悪かったから出てくれないだろうが。
ソファーに寝転がって恭弥の番号を呼び出して通話ボタンを押す。
暫く呼び出し音が鳴った後、唐突にブツッと切れた。
「なっ、出もしないで切りやがった…」
再び深い溜め息を洩らして目を閉じる。
今日はもうこのまま寝てしまおう。