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□誰にも聞かれたくない
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「ちょっと主任!」
ここは庁舎の地下にある資料室。
後輩に絡まれている菊田を見て、
居てもたってもいられなくなってここに連れてきた。
「ちょっと主任!聞いてます?」
もちろん声は聞こえているが、
今はそれに構っている場合ではない。
菊田を壁際まで連れていき、
壁と自分で挟み逃げられないようにしてから
背伸びをしてキスをする。
「‥玲子」
合間に聞こえた菊田の声に聞き惚れたのも束の間、
ふわっと体が浮いたような感覚に陥った。
次の瞬間、
私の後ろには壁があって
前には菊田が仁王立ち。
私の頭には大きなはてなマーク。
「んっ‥ふっあぁ…」
いきなりの菊田からのキスに不意打ちを食らった。
「‥あっ‥んんっ、はぁ..」
合間に漏れる不本意な自分の声を聞いて
恥ずかしくなる。
急に菊田が私から離れた。
ちょっと寂しいな。
「玲子、続きは後でな。..他のやつに玲子の感じてる声、聞かれたくない。誰にも聞かれたくないんだ。」
..結局いつも菊田のペース。
――誰にも聞かれたくない
-fine-