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□キミヲマモル
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「こんにちはー」
玲子が呼び鈴を鳴らしてしばらくすると、
ドアが開いて、高岩遼太郎があらわれた。
「あんた、だれだ?」
「警視庁捜査一課の姫川と申します。」
「‥まあ良い、‥入れよ。」
高岩に導かれ部屋に入る。
―カチャ‥
鍵がかけられた。
―大丈夫、こんなの想定内。
大屋さんに鍵を借りて菊田に渡してあるし。
怖くない、私はもう強いの、怖くない。
玲子は必死に自分を奮い立たせる。
「きゃっ‥」
突然、玲子は高岩に押し倒された。
高岩の目つきが変わったのが簡単に分かった。
「姫川さん、だっけ?俺にとっては警察だろうが何だろうが関係ないんだよ、あんただって警察官である前に女だろ?」
玲子は自分の体が震えていることに気付いた。
―あの時と同じ‥‥‥こんなの嫌!
高岩が玲子のラインをなぞり、顔を近づけてくる。
体を撫で回していた掌は、柔らかい膨らみにたどり着くと、やわやわと揉みしだく。
必死に抵抗するが、女の細腕では敵わない、力の差は目に見えている。
―菊田、助けて‥菊田‥菊田‥
「そこまでだ」
突然玄関の扉が開き、菊田が入ってくる。
なかなか出てこない玲子を不安に思ったのだろう。
最初は抵抗していた高岩も、菊田に押さえつけられ、堪忍したようだ。
大人しく手錠をかけられている。
もう大丈夫なのに、体が言うことをきかない、動けない。
そんな玲子の様子に気付いたのか、
高岩を葉山と井岡に預けた菊田が歩み寄って来た。
「き‥くた‥」
無言で玲子を抱きしめる菊田、
「お疲れさまでした」
その一言で玲子の瞳から涙が溢れる。
体の緊張が解れていくのが分かった。
もう体は震えていない。
「私、また思い出しちゃった‥」
悲しそうに、また悔しそうに玲子が呟く。
「でも今日は、ちゃんと抵抗したじゃないですか。警察官として、被疑者を捕まえようとしたじゃないですか。」
菊田が玲子の瞳をしっかり見て答えた。
「そろそろ、行きましょうか。みんな待ってますよ、主任のこと。」
「‥うん」
「立てますか?」
玲子が差しのべられた菊田の手を取り、立ち上がる。
「菊田、ありがと‥。」
その言葉と共に
―チュ
玲子から菊田へ不意打ちのキス。
「‥い、行くわよっ!」
照れた彼女の斜め後ろを着いていく菊田であった。
-fine-