ポケ江戸!
□ポケ江戸!
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〜数分前〜
「おいカイリュー。お前……腕が震えてきてんぞ?」
「はあ? それはお前の方なんじゃねぇか……リザードン!」
グググッ――
と、実は限界がきていることなどおかまいなしに二匹は腕の力を強める。
元々、これは"ケンカ"ではなくただの"力比べ"だったのだ。
ことの発端は、二匹がポケ江戸大通りに来てすぐのことだった。
「あー! リザードンとカイリューだ!」
「ほんとだー!」
「かっこいい〜!」
「あくしゅしてー!」
大通りにある飯屋で何か食うか、と仲良く話しながら歩いていたところ、六匹の子供が二匹の前に集まってきた。
二匹はよく何かしらと競い合っている。しかし別に仲が悪いというのではない。互いに力を認め合っている――"友"という字を書いての"ライバル"なのだ。なので今のように一緒に歩いている時はただの仲良しコンビで、バトル(ケンカ)の時はライバルと振り分けている。
現在仲良しコンビは子供の相手を面倒臭そうにしながらもしっかりと握手を行う。強いと言われている二匹は、結構子供達にも人気があるのだ。
子供達はうれしそうにワイワイとはしゃぐ。その様子を見て、満足しただろうと思った二匹がその場を去ろうとしたその時、力比べのきっかけになった言葉が飛び出した。
「ねぇねぇ、リザードンとカイリューって、どっちがいちばんつよいの?」
二匹は顔を見合わせた。もちろん、まだ決着がついていないため答えることができなかった。しかし何も言わずにいると、どうなの、と返事を促(うなが)す子供が出始めた。
困った二匹は仕方なくこう答える。
「今決めることはできねぇよ」
「それができたら、もうとっくに決まってるだろ?」
それを聞いてほとんどの子供は納得したが、どうしてもはっきりして欲しい子供はこう言い出した。
「じゃあさ! "ちから"はどっちがうえなのかはきめてよ!」
そして、結局互いの腕を押し合う力比べを行うことになったのだが、やっているうちに二匹のライバル意識に火がついてしまい、今の状態へとなってしまったのだった……。
リザードンとカイリューの競争心はフレアドライブの如く燃え上がり続け、途中で止めようと邪魔する者が出たらすぐに協力して吹っ飛ばした。
やがて本当の限界を察した二匹は、互いの汗だらだらな顔をにらみつけながら言う。
「……そろそろ、決めるか」
「そう、だな……」
最後の力を振り絞ろうとした、その時である。
「はいストップ、十万十手(十万ボルト+十手の略称)ーー!!」
ビリビリビリビリッ――
と、聞き覚えのある声と共に強い電撃が二匹を襲ったのは。
「ぎゃあああああああああああああああああ!!」
ただでさえ体力がほとんどない状態ではもちろん、強い電撃に耐えることはできず、収まると同時に二匹はバタリと倒れたのだった……。
* * *
「仕方ねぇだろ。それしか"一発"でお前ら鎮める方法ねぇんだからよぉ」
ピカチュウ親分はさらりと言い分を返した。
「いや、もっと方法あるだろ……」
「あるか〜?」
(なんだその言い方)
リザードンは親分の態度にイラッとしながらも別の方法を挙げる。