ポケダンハロウィンパーティー
□ポケダンハロウィンパーティー
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「少なくても、俺達が来た時にはあったぜ」
(ノアじゃなかったんだ……)
「その様子だと心当たりがあるのか?」
リオンにそう言われてから、ノアはそのせいで冷静になれたのだと理解して納得する。ものすごく且つ確実な心当たりがあった。
(普通に考えてあの子達しかいないよねー)
思い立ったら即行動と、ノアは急いで屋敷の中へと戻ろうとした。その時に三匹に名を呼ばれ、すっかり忘れていたことを申し訳なく思いながらちょいちょいと手招きをする。ついてくるのを確認してから再び歩き出すと、怒気を含んだ声音であるポケモンの名を叫んだ。
「ちょっと、ギルガルド!!」
(確か……この屋敷の持ち主の名だったな)
三匹がまず眼に飛び込んだのは、広々としたホールの床に広がる鮮やかな赤の絨毯(じゅうたん)だった。中央に白いテーブルクロスが敷かれた長テーブルと人数分のイスがあり、天井にはきらびやかなシャンデリアがぶら下がっている。二階へと続く階段は左右の端から曲線的に伸びていて、まさに誰もが思い描くような屋敷の内観だった。まだ昼前なのにカーテンを閉めて屋敷内を明るくしているせいか、うっかり今を夜だと錯覚してしまう。
先に到着していた招待客達はイスに腰かけて休んだり、少し離れた場所で笑い声を上げながら雑談をしたり、シャンデリアの周りをふよふよと楽しげに飛び回ったりと思い思いに過ごしていた。
「ギルガルド。バケッチャ達は何処?」
リオン達が興味津々に見回していると、ノアが見知らぬポケモンと何やら話をしていた。どうやら彼がギルガルドのようだ。
「どうしましたノアさん。そんなに怒って」
屋敷の主らしく、落ち着きのある丁寧な口調だった。怒っているノアに対して慌てることなく対応している。
「バケッチャ達が私の作った看板にイタズラしたみたいなの。おかげで今来た友達がびっくりしちゃってさ」
「なんと! それは大変失礼なことを……」
「まぁ、あの子達はまだ子供だし、ハロウィンでかなりテンション上がってるから仕方ないと思うけど」
「いいえ。たとえ貴女(あなた)の無理な願いでお貸しするにしても、せっかく来て下さったお客様に不快な思いをさせてしまうなんて!」
「何かさりげなく文句言われてる気がするけど気のせい?」
「気のせいです!」
(気のせいじゃねぇよ! わざとらしくはっきり言うな!)
「キャアッ!」
ノアが心の中でツッコミを入れていると、突如後ろからピカリの悲鳴が聞こえた。バケッチャ達がまたイタズラを仕掛けたのだと思って振り向く。
(あいつらまた――)
「かわいーー!! ちっちゃいッ!!」
「あ……えっと……お、おかしをくれなきゃイタズ……ラ……」
「リトルチャ!」
「どっ、どうしよビッグにぃちゃん……!」
「大丈夫だ。ひどいことは絶対しない」
「ほら。このお菓子が欲しかったんだろ? お菓子用意しろって招待状に書いてあったのはこの為だったんだな」
(ママみたいにあったかい……)
「おいリトル。オマエうとうとしてっぞ。ネムイの?」
ズコッ――
あまりにも予想外な状況を目の当たりにしたノアは思わず前のめりに転ぶ。最初は何が起こったのか分からなかったが、少し考えればおおよその見当がついた。