歌×庭混合

□放課後・迎え
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放課後。



「月宮」

『はい?』


帰る準備をしていると、仁王君が声をかけてくれた。


「これから部活じゃき、一緒に来んか?」

『…え。い、いいんですか?』




仁王君は私が朝テニスをしているところが見れなかったのを知っている。

わざわざ声をかけてくれるとは。

なんていい人だろう。


「おう」

『じゃあ、よろしくお願いします』

「ん」



鞄を持って仁王君の後に続いた。
時間はまだ平気。

あと一時間くらいは学校にいても大丈夫。


少しくらい過ぎても、走ればなんとかなるだろうし。

教室を出て、校庭の方に歩いて行く。



『仁王君はテニス好きですか?』

「ん?まぁな。面白い」

『どういうところが…って、聞いても?』

「コートに入れば腹の探り合いの始まり。
相手がどう来るか読んで読まれての戦いじゃ」


ボールがどう来るか、とかそういうことか…。

やっぱりスポーツにも相手の気持ちを考えてどう来るかを予想し合うっていうこともあるんだ。



『そしてたまに裏をかいて。そして相手のそうきたかっ、て悔しそうな顔を見るのが楽しみでもあったりするんでしょう?』

「………おう。ようわかっとるのう」

『仁王君は思ったよりもサディスティックなんですね』

「――っと、うわっ」

『あっ!』



階段を降りようとしたとき、仁王君が足を滑らして落ちてしまいそうになる。

私は急いで手を伸ばして後ろから抱きしめるように、自分の方へと引っ張った。

なんとか落ちずにすんで、息をつく。



『はぁ…。もう…大丈夫ですか?しっかりしてください』

「……」

『仁王君?』

「あ、あ。なん、でもない、きに」


そっと離れて隣に移動し、怪我がないか見る。


『怪我は…なさそうですけど…。足とか痛みませんか?』

「大丈夫じゃ。ありがとう」


笑って階段を降りて行く仁王君。

自然に歩いているところから、本当に怪我はないようだ。


よかった。


私も仁王君の後に続いて階段を降りていく。




しかし。





『…っ!?』



一段目の階段を降りたところで右足首に痛みが走る。

あまりの痛みに、ついしゃがみこんでしまった。


「…月宮?」


ズキズキと痛みが走る。
仁王君が私に気付いて私の目の前でしゃがんだ。



「怪我したんか?」



まずい。

変に心配かける必要はない。



『…怪我したと思いました?』



パッと笑顔になってそう言うと、仁王君は呆気にとられた顔になった。



『私、そういう顔意外と好きなんです』



笑って立ち上がり、仁王君の隣を通り過ぎて階段を降りていく。

すると後から喉を鳴らして笑う声。



「面白い奴じゃのう」

『よく言われます』


にっこり笑って言うと、仁王君はリズムよく階段を降りてくる。


「気に入った。いい場所に連れていっちゃる」

『いい場所?』


こっち。

何やらご機嫌になった様子の仁王君。
私は仁王君の後についていく。



しかし、仁王君は一階までは降りずに、二階を歩いて行く。



『校庭に行くんじゃないんですか?』

「いいから。ついてきんしゃい」


気分が良くなったのかその分足が速くなっていて、右足をかばいながら歩くことが出来ない。

右足が床につくたびにズキンと大きな痛みがくる。

…大丈夫大丈夫、まだいける。





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