歌×庭混合
□クラス
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『初めまして。父の仕事の都合により東京の方から来ました、月宮真琴と申します。
よろしければ仲良くしていただけたらと思います』
教室。
時間が来たので、切原君と分かれた。
そして今、自己紹介を終えたところ。
「んじゃ、えーっと。仁王の隣だな」
仁王。
確か切原君が注意しておいた方がいいと言っていた人物。
何を考えているか分からないと言っていた。
丁度よく、一番後ろの窓側の席。
銀髪の人の隣の席にゆっくり腰を下ろす。
『よろしくお願いしますね』
「仁王雅治じゃ。よろしくの」
方言…。
ということは、彼は地方出身なのだろうか。
独特な言葉というのはいつの間にかうつってしまいがちだから気をつけなければ。
教科書類はしっかりと用意していたため、仁王君との他の接触はない。
これならゆったりできそうだ。
「はーい授業始めまーす」
教科書を取り出し、ノートを開く。
こういった一般的な学校というのは今まで中学までしか行っていなかったためにこういう勉強をするのは久々だ。
頭がついていくか…不安なところはある。
…といっても、分からなかったら聞けばいいだけだが。
先生の話を聞きながらノートをとっていると、隣から小さく丸まった紙が飛んでくる。
目を飛んできた方にやれば仁王君の模様。
だが、何もしていないかのようにすました顔で黒板を見つめていた。
なんだろうと思いながら、その紙を広げる。
[さっきテニスコートに来てただろ]
その一言が書いてあった。
見ていたのか、それとも聴いたのか。
そもそもあの大勢の女生徒がいたのによく気づきましたね…。
自分も、いつも持ち歩いている小さいメモ帳を取り出し文字を書いた。
[行きました。よくわかりましたね]
綺麗に紙を折って隣へちょいっと投げる。
上手く机の上に乗ったのを確認したら、またノートをとる。
教室にはシャーペンの芯を出すカチカチ、という音と紙同士が擦れる音、あとは先生の声しか聞こえない。
少ししてまた机の上に、さっきよりは大きい紙の塊が飛んできた。
広げて中を確認すると、また文字が。
[囲ってた女達とは距離置いてたから分かった。あとネクタイの色が珍しい]
ネクタイ…?
そういえば、今日私は少し暗い赤のネクタイをしてきましたが他の人は緑色が多かった。
でも、指定はされていないはず。
なぜ皆が緑を選ぶかは分からないが、いけないことじゃないならいいだろう。
こちらも再びメモ帳に返事を書く。
[なんだか嬉しいですね。でも、どうしてあんなに女生徒が多いのですか?]
綺麗に折って隣へ投げる。
仁王君は中身を見たあとに少し考えてから返事を書き始めた。
ん?
ふと窓の外を見ると、ジャージに身を包んだどこかのクラスが校庭を走っている。
『…!』
切原君だ。
校庭を走っている切原君を見ていると、向こうもこっちに気付いたみたいだ。
声は出していないが、こちらに向かって両手を大きく振りながら走っている。
私は笑って切原君を見ていれば、彼は途中でバランスを崩した。
「うおっとっとっと…セーッフ!」
「なにやってんだよ切原」
「うっせえ!」
なんとか持ち直したが、同級生にからかわれている。
その様子に、私は口元に指を当てて声がもれないように笑った。
「おい切原!さっさと走れー!」
体育の先生らしき人の声がして、切原君は再び走り出す。
やがて自分の机の範囲で紙が擦れる音がして、見れみればまた紙の塊が。
開いて見てみるとさっきよりも長い文。
[全部ファン。レギュラーがキめたらキャーっていう役。
全国大会に行ってからくっついてきた。
レギュラーは、まぁまぁ悪くない顔してるからってのが一番の問題]
なるほど…。
レギュラーの人達は所謂イケメンが多いということですね。
ああいうのはあまり見たことがなかったですが、あんなに多い女生徒が集まっているのは初めて見たから吃驚していた。
そして、また返事を書く私。
私達は授業の間の殆どをメモ帳で会話していた。
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