あいとゆうきとむげんのかなたへと

□第二話 初陣、未来と誇りを背負ったIS
2ページ/5ページ



授業を終えるとすぐに前の扉の影に陣取る。

周りのクラスメートはそんな透夜が気になるのかチラチラと見ている。

廊下を走る足音を聞くと透夜は指をパキポキと鳴らして握りを確かめる。


ガラッ――


「ヘルプミーとu」

「ドリルみるきぃパーーーンチ!!」


クラスに踏み込んできた一夏に見事なブローを放つ。


「そげぶっ!?」


天井まで吹っ飛び倒れる一夏。

それを不満に思いながら自分の椅子を引っ張り出して座りながら足を組んで見下す。


「いきなりなにすんだよ!?」

「休み時間の度にやって来られたら不機嫌にもなる。んで、今度はなに? てか俺をドラえもんと勘違いしてない?」

「だって頼れるの、お前ぐらいしかいないし…」

「少しは自分で解決しようっていう気概を見せなさい。男の子でしょ?」

「面目ない」

「はぁ………それで? 今度はなにさ?」

「模擬戦をすることになりました」

「……………は?」

「模擬戦だよ」

「誰と?」

「セシリア・オルコットと」

「なんで?」

「その〜、場の流れ的な?」


そこで一夏とセシリアが本編間もない時に戦ったのを思い出す透夜。しかし理由が思い出せなかった。


「というわけでしののんさん、理由を聞かせてちょんまげ」

「そのしののんさんは止めてくれませんか?」


一夏と共にやってきた箒は簡潔に答えてくれた。

クラス代表を決めるのに周りが一夏を推薦。

それにセシリアが反対し、日本をバカにした。

頭にきた一夏がイギリスをバカにして、互いに祖国をバカにされたことにキレてクラス代表はISでの決闘という風に決まった。

実に分かりやすい男の子な理由だ。


「小学生かお前ら」

「でもよ! あそこまで馬鹿にされちゃ黙ってられるか!」

「だからって相手と同じ、この場合、オルコットさんと同じように国をバカにしてどーする。オルコットさんを個人でバカにするならまだしも、国にはなんの罪もないだろ。まぁ、その辺りは向こうも同じ事が言えるからアレなんだろうけど。それに日本はお前さんの大好きでさいきょーのお姉さんを育んだ国だし、織斑先生に箒の剣道は日本から生まれた競技だ。少し考えれば切り返せる要素はいくらでもあるだろうに」


「うぐっ」

「熱くなる前にもう少し周りを見るようにしろ。それと彼女にも色々あるんだろう。代表候補とて立派に国を背負わなければならない立場だ。成り行きでISに乗れてしまったお前や俺より遥かにプレッシャーがかかる立場に居る。お前も男の子なら女の子相手にムキになるな。もう少し余裕を持て」

「…すまん」

「謝るのは俺と違うだろ。あと、謝るなら決闘の後にしろ。今謝りに行っても余計に話が拗れる」

「ありがとう透夜。でも凄いよなぁ。もしかして透夜はアイツとも知り合いなのか?」

「まさか。ただ単にフロム脳を全開にしたコジマ感染者の戯れ言さ」

「コジマ感染者? 透夜は病気なのか?」

「いんや、なんでもない」


まさかコジマが廃れるとはな。

一抹の寂しさを覚えつつ。次の授業のチャイムが鳴った為、一夏と箒をクラスに返した。


「(クラス代表ね。ウチはどーなるんだか)」


そしてその疑念はすぐに解消されることとなる。


「はい! お兄様を推薦します!!」

「なんでだよ!!」


結局、セシリアのようにつっかかる娘が居なかった三組は、透夜が代表に選ばれてしまった。すべては乙女達のスウィーツの為に……。


「理不尽だ……」


背中を煤けさせながら牛乳を飲んだ。


「透夜ぁぁぁ! 本題忘れてた〜!」

「いくらなんでもH過ぎんだろ」


純粋なのかバカなのかはっきりわからない一夏に頭が痛くなってきた。


「それで、今度はなに?」

「俺にISのことを教えてくれ!」

「姉に訊け」

「自業自得だと言われた」

「はぁ……」


俺はこの数日の内に何回溜め息を吐いただろうか――


「1日や2日でISを理解するのは無理だし、ましてやテキストを捨てるアホに覚え切るのも限度がある」

「な、なんでそれを」

「女子の噂力を舐めるな。んでだ、お前の得意分野ってなんだ? もちろん、戦い関係」

「そんなんわからねぇよ。今までまともにケンカすらしたことないんだ。強いて言えば箒んちの剣道場に通ってたくらいだ」

「なら箒に頼んで剣道の稽古でもつけさせてもらえ。ISの事を覚えるよりまず、戦う為の心を作れ。感覚を思い出せ。ISが人の形をしているのだから、そこから自分の戦闘スタイルを模索しろ。とはいえ、お前はおそらくブレーダー向きだろう。剣道やってたなら尚更な」

「わかった、箒に頼んでみる。でもスゴいよな透夜は、俺のことを良く知ってるし」

「世界で最初にISを使える事がわかった男子の情報くらい、集めるのは当然の事だ」

「当然なのか?」

「当然だ。それと、夕飯後に俺の部屋に来るといい。ISを動かす参考程度の事は教えるよ」

「マジか!? そりゃ助かる! いやあ、持つべきものは男の友達だよなぁ〜」

「まったく……」


にへら〜と笑う一夏と、それに呆れながらも柔らかい笑みを浮かべる透夜に、三組の女子達は顔を赤らめるのだった。






次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ