あいとゆうきとむげんのかなたへと

□第一話 主人公は苦労人お兄様
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昼食後、戻り辛いが教室に戻った。そしたら――


「きゃ〜〜〜! 我らがお兄様がお戻りになったわよ〜!!」

「眼鏡のインテリ系を思わせて主夫な年上お兄様。でも緊張から倒れちゃうガラスハートの繊細属性!」

「守ってもらいたい父性系兄属性に、けど逆に護ってもあげたい母性本能をくすぐるタイプ! 聞いてはいないわよ、お兄様!」

「三組で良かったー!」

「これで、これで灰色の青春とはおさらばよ!」

「一組だけ良い思いはさせないわ!」

「えへへへ、お兄様ぁ〜」


拝啓。

教官、一組だけかと思っていましたが、三組もとんだ人外魔境でした。





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「では、ここまでで質問は?」


ディスプレイに映る専門用語に関することをノートに取りつつ捕捉するべき場所をテキストから探す。

テキストには様々なメモや赤線が引かれ、時にはポストイットで後の復習に役立つようにする。

しかし頭に直接情報をぶち込まれているお陰で、俺は半分ほげーっとしながらノートを書いていた。モルモット生活様々だ。

いや、あまり思い出したくはないのだけれども。


「竜宮君。大丈夫かな?」

「ええ。大変わかりやすい授業内容ですので。教える側が良い証拠ですよ。それと、先は大変ご迷惑をお掛けしました」


そう締めくくりながら頭を下げる。なんせいきなり倒れるというハプニングを起こしてしまったのだから、迷惑をかけていないはずもなし。


「いえ、最初はびっくりしましたけど、何事もなかったようで安心したよ」


ニコニコと笑う担任。年は俺とそんな変わらなそうな人だ。

てか今気づいたが――


「ちなみに、もう気持ち悪かったりしない?」

「え、ええ。はい」

「香水に酔っちゃったのよね? ホラ、一年生って加減知らないから」


そこら中からあははって感じで苦笑いが飛ぶ。


「すんませんでした。そしてありがとう。改めてよろしく」


香水のカオスな匂いがしないのは、わざわざ俺の為に香水を落としてくれたのだろう。

中にはいやいや落とした子も居るだろう。

だから謝罪と感謝を述べ、出来るだけの笑みを浮かべながら言った。どうしてなかなか、良い娘達じゃないか。


「「「「ぽっ…」」」」

「「「「ぐはっ!」」」」

「さ、さすがお兄様の柔らかスマイリー。二十歳のあどけなさ残る笑顔に大人オーラのジェットストリームアタック。これが年上の力か……がく」

「しっかりして美都子!傷は浅いわ!」

「もう止めて!美都子のライフはとっくにゼロよ!」

「ちょっと…濡れちゃった。キャっ」


前言撤退。やっぱり人外魔境アホと変態の集いだ。





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一日の授業を終え、俺は一夏と寮内で別れた。

宛てがわれた部屋は三階の一番奥だ。

一夏と同じ部屋だとばかり考えていたが、どうやら一人一部屋を当てられたらしい。

部屋に入って俺1人である事を確認すると、どっと疲れが出てそのままドアに寄りかかり、ずるずると床に座る。

訓練とは別の意味で疲れた。いやホンマ、マジで。

ぼーっとしながら今日一日を振り替える。

勉強を教えてと話し掛ける子の相手をし、何かにつけて俺の所に駆け込む一夏に笑い掛け、箒の愚痴を聞きながらあれやこれや相槌を打ち、クラスの人外魔境アホの変態共に溜め息を吐く。


「さて、シャワーにでも」

「た、助けてくれ透夜ぁぁあっ!」

「…………(ガチャ」


廊下から悲鳴が聞こえてきた。

それに俺は鍵を閉めて脱衣場に入る。


「開けてくれ、居るんだろ透夜!(ドンドンドン」

「触らぬ神に祟りナシだ」


もうIS原作に関してはレギュラーな人物と機体しか覚えてないが、大方あのラッキースケベ恋愛原子核からして――


「頼む! ほ、箒が来ちまう!!」

「はぁ……」


脱衣場から戻って鍵を開けてやる。

するとドアを壊れんばかりに開けて飛び込んで来た一夏。


「た、助かったぁ〜」

「まったく、夜に何騒いでんのよ?」

「いや実は――」


続きを聞く前に何かが扉を突き破る音が室内に響いた。

続いて金属がひしゃげる音が鳴った。

そこには死神三番が居た。もしくは般若、あるいは幽鬼。


「い〜ち〜か〜」


腹に響き背筋が凍るような声を聞いた一夏が俺の後ろに回り込む。

俺は一夏を情けないと思いながら暴走している箒を見つめる。


「覚悟し…ろ……」


一夏が背中にまわったから俺に気づいたんだろう箒。

その反応は何とも少女らしく、半裸の男を見て顔を赤らめていった。

今の透夜は黒のタンクトップとスパッツという格好だ。

細い腕にくびれの付いたラインに細くも必要部位に程良く筋肉のある美脚。日本人にしては白い肌。

見惚れるラインの男の素肌に、色々と変な恥ずかしさを感じてしまっていた箒。


「ほ〜う〜き〜」

「は、はひっ!?」

「そこに座りなさい。お前もだ一夏」

「い、いや、だから俺は――」

「云十万するドアをぶっ壊したんだ。理由を聞かせろ。でなければこのまま織斑女史に突き出してやる」


一種の脅迫が効いたんだろう。箒の口から今回の沙汰の内容を語った。それを聞いた俺は正直に思った。


「アホか…! そんなことで俺の平穏を乱すな!」

「そ、そんなこと!? 男女が同じ部屋になるのがそんなことってなんですか!」

「そんなことはそんなことでしょ? 第一にして、一夏や俺がIS学園に居る時点で女子校感覚は止めなさい。そういった事態が起こることの可能性を考えなさい。そしてドアを破壊するな」

「うぐっ。すみません…」

「一夏も一夏だ。箒が頭に血が上ったことは理解出来る。女の子がバスタオル一枚とは言え裸を見られたんだ、仕方ない。だがそれで逃げるなよ、普通は謝るのが先だ。箒だって鬼じゃないんだ。誠心誠意をもって冷静に話しかければこんなことにもならなかったはずだぞ?」

「…すいません」

「謝る相手が違うだろばかもん」

「いで!(ガツ!」


とりあえず腹癒せに一夏に拳骨を落とす。事情を聞いて場面を思い出したが、たしか一夏は廊下に出てすぐに部屋に入れたはずだ。

俺というイレギュラーな逃げ場所が出来た所為か。

てかさすがラッキースケベに定評のある恋愛原子核だ。

相手が箒でなかったら1日目から社会的に危うかったぞお前。


「ごめん箒!俺の不注意とはいえ裸見ちゃった」

「…私こそ、いきなり襲い掛かって悪かった」

「許してくれるのか?」

「うん」


なかなか良い雰囲気に戻った2人を見つつ、廊下の方に向かう。

覗き見する女の子達がそくさくと部屋の入り口周りから離れた。

薄着の透夜に騒ぎ出す女子諸君だが、生憎、透夜は周りを気にする容量は頭に残っていなかった。


「(どーするよ、コレ)」


見るからに云十万しそうなドア。

蝶番は歪んでいて力を入れても閉まらない。しかも上と下が斜めに泣き別れている。

刺突ならわかるが、普通に木刀で木製の扉を両断する箒が凄いのか、箒の斬撃に耐える木刀を褒めれば良いのか。てか木刀の柄に洞爺湖って書いてあった。銀さん仕様なら仕方がないのか?

とにかく、蝶番は全とっかえ、ノブ周りもとっかえだな。


「透夜さん。本当にすみませんでした」

「俺もすまなかった。なんでもするから箒を許してやってくれないか?」

「別にお前達に怒ってるわけじゃないから気にするな。人間は失敗して覚える生き物だ。社会的庇護下にある内に大いに失敗しろ。自分で責任を持つ事を覚えろ。あとなんでもするっていう言葉を軽々しく口にするな。俺が死ねって言えば一夏は死ぬか?」

「うっ、いや、さすがにそれは」

「だろ?謝罪にも言葉を選べ、なんでもするが通じるのは小学生や中学生同士まで、高校生は半分大人として扱われてくる時期だ。それを踏まえて言葉を選べ。どうしようもなくなったら大人を頼れ、自分だけで出した答えを突っ走るな、周りに意見を求めてあらゆる可能性を模索しろ。でなければ周りに頼れずに寂しい大人になるだけだ」


一気にまくし立てた透夜に一夏も箒も一時一句を覚え込むように聞き入る。


「そして大人は子供の責任を取る為にいる。寮監督には俺から話しておくから、お前達は部屋に戻って寝なさい。明日も早いんだからさ」

「ありがとうございます」

「ほんとにすまなかった」

「いいって。さぁ、帰った帰った」


十分反省した2人に透夜は笑いながら手で退出を促した。

そして翌日。

少しビクビクしながら監督の先生を部屋に向かい入れた。そこで思い出した、監督が織斑千冬先生であったことを……。






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