星光の魔王-シュテル・ジ・エルケーニヒ-

□第H話
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「ここで46カ所目」

黒いマントを肩に羽織りながらすずかは海鳴市を歩いていた。

海鳴市には魔術師の家系なんて存在しない。しかし今、魔術的な災禍が降りかかろうとしているこの街を守る為にすずかは結界の基点を吟味しているのだ。

海鳴市も竜脈が存在する街だった。

海と山が近い立地、故に命で溢れている土地であるからかもしれない。

それだけではないのかもしれないが、今は好都合だった。

竜脈の流れを整えて大結界の発動と維持に必要な力とする。

結界を創る道すがら、いくつかの基点候補地に知った魔力の残滓を見つける事が多々あった。

術式も未熟で構成が甘いそれを上から書き換えてより強固な物とする。

「(今日のノルマが終わったら遊びに行こうかな?)」


すずかは結界の基点に術式を打ち込みながら友人の事を考えていた。

何もかも1人で抱え込んで無理をする友人の姿。

頼って欲しい。ずっと一緒に居ると誓った。それは出任せでもなんでもない。

喜びも苦痛も一緒に感じて生きたい。

あの夜からずっとそう思ってきた。


「なのはちゃん……」


その名を呟けば鼓動が速くなる。顔が、頭が暑くなる。


「私が頑張らなくちゃ」


街を守るのはなのはを守る為、なのはを守るのは邪魔をさせない為。
筋書きはかなりの修正を余儀無くされた。

でも誰にも邪魔はさせない。

邪神の謀略? ループする世界の運命? 自分達に課せられた宿命?

そんなもの関係ない。


「そうだよ。関係ないもん。私は私のおとぎばなしを紡ぐの。誰にも邪魔させない。させないもん。なのはちゃんを一番理解してるのは私だもん」


気高く孤高の存在を自分の物にするまでの余興の楽しみ。

余興の間に犠牲が出ないように配慮するのもすべては彼女の為。そして自分の為。

自分達の演技は舞台が耐えられない程苛烈で熾烈なのだ。

舞台を壊れないように補強するのは至極当然のことだった。

さらにすずかにはやるべき事があるだけに、この竜脈を整える作業は決して抜かることの出来ないことなのだ。






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