星光の魔王-シュテル・ジ・エルケーニヒ-

□第4話
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すずかは今まで人を避けてきた。

それは自分の生まれからくる恐怖からだった。

夜の一族と呼ばれる吸血鬼一族の生まれである彼女は、自身の血に怯えていた。

だからなるべく人と関わらないようにしていた。

だが彼女も友達が欲しかった。

楽しそうに会話したり遊んだりする同級生達が羨ましかった。

だが今まで人を避けてきたことでクラスで孤立していたすずかは、自ら進んで声をかけられる勇気が無かった。

友達が欲しい、でも声をかける勇気がない。

どうしたら良いのかわからなかったすずかは、図書室に行っては本を読む毎日を送っていた。

そんな時に出逢ったのがなのはであった。

たまたますずかが読みたい本をなのはが読んでいたのがきっかけだった。

勇気を出して声をかけてみれば、すずかはなのはの瞳に近視感を感じた。ひとりぼっちの瞳――

さらになけなしの勇気を振り絞って声をかけたら、なのはは優しく応対してくれた。

それから毎日すずかは図書室でなのはと話すようになった。

すずかは次第になのはを友達だと想うようになっていった。

そしてその想いがさらに強くなったのは、あの誘拐事件でのことだった。

身を挺して自身を護ってくれたなのは。

自身を犠牲にして自分を逃がしてくれようとしたなのは。
今まで家族以外にそれ程までに想われたことが無かったすずかは、何があってもなのはと一緒に居ようと心に決めた。

さすがに生活環境や社会的に一緒に居られない時は仕方がない。だが学校に居る時は必ずなのはと一緒に居る事を決め、そして護られているばかりでなく、なのはの事を護れるくらい強くなろうとも決めた。

身体能力ならば、幸いにも吸血鬼一族というアドバンテージがある。

しかしすずかはそれだけではなのはを護るには程遠いと思っている。なのはが使う力――魔力。

それを見ているすずかは、少なくともなのはと同じステージに立つ必要があった。

闇の世界の闇に生きる夜の一族。その中でも高貴な血筋の月村家。

すずかの家にも探せば、オカルト的な本は数多かった。

すずかは持ち前の頭脳をフル回転させて魔術と錬金術の研究を始めた。

幸いにして参考書は手元にごまんとある。

なぜ魔術と錬金術なのか、それはやはりなのはを驚かせてみたいという思惑があった。

誘拐犯の話によれば、なのはも狙われる血筋にあるらしい。

そして身を挺して自分を護ってくれたなのはの姿は、まさに白馬の王子様。

なら自分はその王子様を護る騎士だ。


「護ってみせる。なのはちゃんがくれた力で、なのはちゃんの未来は私が護る」


護る為に覚悟を決める者達。

彼女達の未来は険しいだろう。

だがそれでも彼女達は試練と対峙して行かなければならない。

それは魂に刻まれた運命なのだから。





To be continued…
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