星光の魔王-シュテル・ジ・エルケーニヒ-

□第4話
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なのはの朝は早い。

太陽が昇る頃には自然に目を覚まし、身嗜みを軽く整えてから誰よりも一足早く中庭に出る。


「――――Anfang-セット-」


日の出の光を浴びながら魔術回路を開き魔力を身体に通していく。

魔力が充分に行き届いた身体で御神流の体術の型を舞う。

今しばらくは御神流もまともに振るえないなのはは、それまでの繋ぎ引いては刀を持ち歩けない場所での自衛手段の一つとして、手探りでも体術を身につけてしまう事は急務だった。

それでも未だ出来ることは正拳突きや回し蹴りくらいである。

精々で、拳に纏った魔力を殴った瞬間に対象物に放出して爆裂させるくらいだ。
体術の鍛練のあとは、そのまま道場へ向かい、クールダウンを兼ねて座禅を組んで瞑想に入る。

魔力の扱い方の効率や体術の体捌きを頭の中で模索する。

そうしている間に、士郎、恭也、美由希がやってくる。

恭也と美由希が鍛練する傍らで、なのはは士郎から学ぶ。

そして士郎の前で型を舞う。

修行中は親子ではなく師と弟子である為、今まで見たことがない程士郎は厳しかったが、それでもなのはは弱音を吐かない――代わりに涙を流しながら士郎の教えを胸と身に刻んでいく。涙を流すのは心を鍛える過程の士郎の怒号が本気で恐いからだ。

朝の鍛練のあとには順番でシャワーを浴びてから朝食になる。

お父さん子の傾向があるなのはは士郎
と共にシャワーを浴びてしまう。時々美由希からも誘われて入るが、その時は紳士として絶対に眼は開けない。

食事のあとは学校へ向かう。朝練のある登校の時は遅れるわけにも行かない為、バスで通っている。


「あ、おはようなのはちゃん!」

「おはようなのは」

「おはようございます。すずか、アリサ」


友人2人と挨拶を交わしながら、なのはは2人の下まで歩いていく。

2人が横にズレて開けたスペースになのはは腰を据える。

するとすずかは間を詰めてなのはの手を握りながら身体をくっつけてなのはの肩に頭を乗せた。


「そういえば、7月にデモンベインがPS2で出るんだよね?」

「ええ。私は既に予約を済ませましたが」

「さすがなのはちゃん。対応が速いね」

「デモベ信者の私に死角はありません」

「ちょっとちょっと、一体なんの話し?」

「アリサちゃんには少し早いお話しだよ」


なのはの後に割り込んできたアリサに、すずかは頭を起こしながら少し意地悪い笑みを浮かべて返答した。


「むぅ、すずかが出来てあたしが出来ない話しなんてないわよ!」

「でもアリサちゃんってSAN値低そうだから止めておいた方がいいよ」

「…沙耶の唄とエヴァのまごころに耐えられるなら大丈夫でしょうね」

「う
っ、ま、まごころはさすがの私も未だに苦手だよ」

「だぁかぁらぁ〜!!なんの話しよ!」


小学2年生には思えないハイレベルなキャッチボールに、アリサはまったくついてはいけなかった。


「アリサ、静かにしないと周りに迷惑ですよ」

「ぅっ、し、仕方ないわね。学校着いたらちゃんと話しなさいよ!?」

「口頭で説明仕切れるかわかりませんが、語らって差し上げましよ」


果たしてアリサがどれほど耐えられる物かと思い浮かべながら、なのはもほんの僅かに口元に孤を描くのだった。

ちなみにいえば、あまりにも鮮明で細かい説明に、アリサは二回目の休み時間にはSAN値直葬されるのだった。







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