星光の魔王-シュテル・ジ・エルケーニヒ-
□第3話
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なのはは春休みに入ってからほぼ毎日あの廃ビルを訪れるようになっていた。
何故廃ビルに通うのか、それはその廃ビルになのはの新しい友人が居るからだ。
「こんにちは、アリサ」
「こんにちは、なのは。待ってたわよ」
なのはの声に反応して応えるのは茶髪の長髪の少女。
最近知り合ったセカンドフレンズ。
名をアリサ・ローウェル。
なのはよりも5歳年上――『彼』には10歳年下の友人だ。
そして士郎以外で『彼』の存在を認知している人物である。
彼女はこのビルの地縛霊である。
なぜなのはに霊が見えているのか、それは力が強いアリサと、自身の在り方に関係があるのではないかとなのはは思っている。
アリサに言わせれば、なのはには2つの魂が存在しているのだとか。
一つが高町なのは、もう一つがなのはで違いないだろう。
それを聞いたなのはは安堵した。
高町なのはが生きている事に――
そしてそれから2年後に希望を見いだした。
高町なのはを復活させる方法。願いが叶う石――ジュエルシード。
それがあれば高町なのはと自身を分離させる事が出来るかもしれないと、そんな希望が湧いてきたのだ。
漠然とした目標だが、何もないよりかは頑張れるとなのはは思った。
「どうかしたの?やけに嬉しそうにして」
「いえ。少し未来に希望を持てた事を嬉しく思っているだけです」
IQ200の天才で、幽霊という特異な存在のアリサには、隠し事など出来ないのはこの短い付き合いでもよくわかっている。
すずかとはまた違う大人びているアリサとの会話は、なのはにとっては数少ない対等に喋れる友人として大切にしたい時だった。
身体は8歳。でも魂は22歳。
そのアンバランスな年齢差からくる他の子ども達との価値観の違いは、なのはにとってはストレスにしかならない。
すずかという友人が出来たことで幾分かマシにはなったが、すずかの場合は、年の離れた妹的な感覚をなのはは抱いていた。
だが天才であるアリサは時としてなのは以上の知識を持っていて、纏う雰囲気も年齢差をあまり感じさせず、なにより気兼ねなく話せることが、なのは
にとって自分と対等な存在にアリサを位置付けたのだった。
そんななのはとアリサの会話は、一週間何をしていたかで始まる。主に日常的な移り変わりが激しいなのはが一方的に話すのだが、アリサはそれに嫌な顔をせずに聞いてくれる。
他にも知識比べをしてみたり、天才視点からの意見を聞いてみたり、アリサ・ローウェルとの出逢いは、なのはにとっては良い傾向に繋がっていった。
そんななのはは最近アリサと共にとあることをしていた。
「どうでしょうか」
「確かに、悪くはないわ」
それはなのはが考えた魂の定着方法だ。
地縛霊のままで居れば、祓われてしまうかもしれないし、あまり良いものでもない。
故になのはは、アリサをどうにかしてこのビルから移動させられないかと思い考えたのが、依り代にアリサの魂を定着させて移動すると言った方法。
アリサがここに居るのは、ここがアリサの死んだ場所であるからだ。
この廃ビルが解体されないのも、呪われていると噂されているからだ。
確かにアリサは地縛霊だが、不必要に呪いをかけるようなことはしない。それは一緒に居て彼女を知っているからなのはにはわかることだった。
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