星光の魔王-シュテル・ジ・エルケーニヒ-

□第2話
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「(さて、これは如何とし難い状況ですね)」


今、なのはとすずかは、どこかの廃屋に捕らわれていた。

それは簡単。誘拐されてしまったからだ。

なのはは抵抗せずに大人しくすずかとセットで誘拐された。

いくら魔力運用の訓練をしようとも相手はプロだ。下手に暴れてすずかにまで危険を及ぼすわけにはいかない。

それに先方はどうやらなのはのことも目当てのようだった。

かつて裏社会で最強の一族と言われた御神と不破――その血を引いているなのはも一応は価値のある存在らしい。


「(弱りましたね……)」

「ぅっ、ひっく、ぅぅっ」


泣いているすずかを抱き締めながら背中をさすって慰めながら、なのはは状況の打開策を練る。これでも声だけなら奇策師。

なにか妙案はないものかと思案する。
相手が銃を持たず自分1人なら主戦防衛で時間は稼げるが、今はすずかも共に居て、相手は銃持ち。

いくら魔力で身体を強化しても、銃弾を防げるとは思っていない。

武器は己の身のみ。

とてもではないが、反抗するのも莫迦らしい。

しかし――


「いや、離して!! なのはちゃんを離して!!」


引き剥がされるなのはとすずか、なのははがたいの良い男に組み敷かれていた。


「私を犯す気ですか?」

「クク、お子ちゃまにしてはその辺は理解しているってか。おれらの組織は何度かお前の一族に手痛い目にあわされているからな」

「故の逆恨みと年端のいかない少女に対する性的暴行ですか。男の風上にも置けませんね」

「こんな時にまで無表情か、まぁ良いさ。直ぐにその顔を別の表情に変えてやるよ」


下卑た歪んだ表情を浮かべながら男はなのはの制服の上着を破り捨てた。

黒いインナーが露わになる。


「やめて! なのはちゃんに乱暴しないで!!」

「おっと、すずかお嬢様もあまり暴れてくれないでくれよ? あんまり暴れたらお嬢様のお友達はもっとひどい目にあうぞ?」

「うぅっ、や、やめて、やめてぇ……」
自身を捕らえていた別の男が発した言葉に泣き崩れてしまうすずか。

聡いすずかには直感的に解ってしまっているのだろう。

自分が暴れればなのはがどうなってしまうのか――

その様子を見て、なのはは僅かに顔をしかめる。

なのはは『高町なのは』のような不屈の心を持ち合わせているわけではない。

むしろ砕け易く折れ易い脆弱な心を星光の殲滅者-シュテル・ザ・ディストラクター-を演じる事で取り繕い、こんな状況でも一応の冷静を保てていられる。

だが中身は21歳の大人の自負がある。

いい大人が子どもを脅して泣かせるような光景を黙っていられるかと言われてしまえば、『彼』はNoと言うタイプの人間だ。

心は気弱だが、なけなしの勇気が、『彼』に動けと言っている。

すずかは久しぶりに、そして初めて得た友人。

こんなどうしようもない自分に声をかけてくれる健気な少女で、守るべき対象だ。

以前の自身には出来なくとも、今の自身に出来る事はある。

なのはは自らの心を静寂に保つ。しかし魂は熱く滾らせる。


「な、なんだ…?」


なのはのスカートを破り捨て、次にインナーに手をかけようとしていた男が異変に気づく。

なのはの身体は淡く紅色に光り始めた事に――






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