星光の魔王-シュテル・ジ・エルケーニヒ-

□第2話
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なのはは少しずつだがすずかと話すようになっていった。

とはいえ大抵は図書室の中でだけだ。何故ならばすずかは別のクラスであったからだ。

昼休みくらいしか鉢合わせないが、それでも毎日なのははすずかと話すようになった。

お互いの事。好きなものや趣味など、他愛もない話しでもなのはにとっては久しぶりの高町家以外の他人との積極的な会話だった。


学校が終わって、今日もなのははいつも通りに廃ビルに行こうと思っていたところに――


「ま、待って…。なのはちゃん」

「…すずか」


後ろからすずかが走ってきて声をかけられ、振り向いた。


「な、なのはちゃんのお家も、こっちなの?」

「いいえ。ですが、寄りたいところがあったので」


とっさに口から出た出任せ。一応真実ではある。


「そ、そうなんだ」


目の前で落ち込むすずかに、なのははどうしたものかと考える。

すずかは気弱だが、育ちが良いからか精神年齢的にはそこまで気苦労する程子どもでもなく、さらになのは自身感じる物や、あのすずかが歩み寄ってくれてもいることで、なのははすずかを友人として想っている。

だから目の前で落ち込まれると気になってしまう。


「私になにか用事でも?」
「う、ううん。な、なんでもないの…なんでも……」

「…すずか」

「なにかな? なのはちゃん」

「……一緒に帰りましょうか。送ってあげます」

「ほ、本当!? いいの!?」

「…別に構いません」


とてつもなく嬉しそうであるすずかの様子に、なのはは心内で安堵する。

すずかの行動と様子から本題を予測して、それが当たった事に。

気弱な人間に対して、その人の要求を先に言い当ててしまうのは良し悪しがある。

良しはその人が言いたいが言えないことを汲み取ることで会話を繋げること。

悪しはあまりやりすぎると、言わんとすることを察してくれるのではないかと思わせてしまうことで、コミュニケーション能力を落としてしまうことだ。経験があるだけに、すずかにはそうはなって欲しくはない。


「では行きましょうか、すずか」

「うん!」


返事を返したすずかは、なのはの隣りまで寄ると腕に抱きついた。

少し歩きにくいと思ったが、満面の笑みのすずかを害するのは気が引けたなのはは黙ってそのまま歩くことにした。

しかしそんなほのぼのする空気も、長く続く事は無かった。






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