あいとゆうきとむげんのかなたへと

□第五話 つよさのりゆう
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真っ暗な闇の中。俺は心の赴くままに人を斬滅していく。

打鉄は俺の動きを忠実にトレースしてくれる。

セカンドシフトした打鉄は白と黒のツートーンカラーになり、左右の非固定部位は肩に直接装着され、両腰には袴状のユニットが戦術機の跳躍ユニットらしきものに変わっていた。全体的に細くなった四躯。左腕の籠手。左右で長さの違う刀。胸を覆う胸甲。頭を覆う兜。

比類無き力。武士の矜持。

復讐の為のチカラ――


「スサノオ、その名前がお前だ」


力強い鼓動。打鉄やラファールを圧倒するチカラ――

復讐の為に鍛え上げられたチカラ!


「ああ……さいこーじゃないか。だってそうだろ? ひとがひとをころせるさいこうのかいらくをきがねなくできるんだからさ……ふ、ふふはは、はははは、ふははははははは♪」


長い永い暗闇の中で、一般人の心が保つわけがなかった。

狂ったように笑いながら人もISも切り裂いていく。どうせ自分を狂わせた組織の人間だ。解除されたISの上から刀を突き刺して息の根を止めてやる。

俺を実験動物とか、サンプルとかしか見ていないやつらなんか、ミンナコロシテヤル――

そういうのが俺にはわかるんだ。頭の中を引っ掻き回してそうさせたのはお前達だ。はは♪自業自得じゃなイカ! バーカ! バーカ!


「結局、お前が一番最後に残ったのか」

「攻撃指令、任務了解。内容――敵の殲滅」

「ヒイロかお前は。でもお前だけは殺す気は起きないな。なんせ寝食を共にして、俺に唯一醜い『色』を見せないお前はな。なぁ、O-02?」

「サンプル01……脅威度C。されどISの性能未知数につき、脅威度未想定」

「はは♪やる気マンマンってか?なら仕方がない。殺さない程度に相手してやるよ」

「目標戦闘態勢へ移行確認。全セーフティー解除、VTシステムアクセス、モードアクティブ」

「VTシステムか、お前のは純粋に動きをトレースするタイプだったな。ふふ、いいぞ、面白い。それでこそ俺のライバルだ。お前を倒さなきゃ俺は前に進めないんだ。悪いが推し通らせてもらうぞ。打鉄改めスサノオ――」

「最終戦闘モード起動。目標を――」

「いざ尋常に――」

「抹殺する」

「勝負っ!!」


暗い闇の中、俺は光を求めて刃を振るった。

人の感情を『色』で見て、思考を読める俺に対する最大最強のカウンター、ヴァルキリー・トレースシステム。

O-02の比類無き頑丈な身体が在ったればこそ可能なそれは、まさに機械仕掛けの戦乙女だ。生体CPUとしてただISを身に纏っていれば勝てるシステム。

打鉄じゃ勝てなかった。だがAIの限界は未知への対応能力不足とスペック以上の動きが出来ない点にある。


「生きてきた。俺はこの時の為に生きてきた。たとえ人としての尊厳をすべて奪われ果てようとも――この生きたいという想いだけは!!」

「――――――!!」


こんなところで死ねるか、死んでやるもんか!

研究所のデータは吸い出した。

この研究所に居た人間。その家族すべてまで皆殺しにするまで、意地でも死んでやるものか!


「防御力低下、作戦続行不可能。作戦要項を破棄、自爆プログラム起動。――メインシステムに異常発生、生体ナノマシン異常発生。ナノマシン強制排除。自爆プログラム停止、以降躯体管制をサンプル01へ移行」


ただ復讐心の塊だった俺。

機械仕掛けの戦乙女だった彼女。

この時はまだそうだった。

矜持も信念もなく、感情で刃を振るっていた。

復讐の戦鬼と機械仕掛けの戦姫。

後に帝国斯衛軍に救助される日まで、彼と彼女は世界を転々とし、組織への復讐を果たして行った。






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