あいとゆうきとむげんのかなたへと

□第二話 初陣、未来と誇りを背負ったIS
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噂のお陰で居心地の悪い朝食から数時間後の休み時間。


「助けてくれ透夜!」

「今度はなに? 一夏」


駆け込んできた一夏に対し透夜は些か疲れた表情で問う。


「代表候補生ってなに!?」

「だはっ!!」


あまりにもアホみたいな質問に俺は机に突っ伏してしまう。

言葉の文面から意味を憶測するくらいはしてくれよ……。


「それは私が説明致しま――」

「はぁ……代表候補生っていうのはね。各国のIS乗りの代表になる可能性のある人を指す。てか文面から少しくらい意味を考えて自分で調べようとしてくれよ……」

「ちょっと! 私を無視して――」

「ちなみに代表候補生っていうのは、その国での選りすぐりのIS操縦者で、大抵が国や企業をスポンサーにつけてる。つまり専用機を持つのが一番早くて可能が高いな。中には一年生でも専用機を持つ娘も居る」

「そ、その通りです! この――」

「まあ、あくまで『候補』だ。元日本代表兼世界最強のお姉さんが居るお前には、実感の薄い話しかもしれないけども」

「んなっ!?」

「つまりIS操縦者のエリートってことだ。ISに関係していなくても知ってる常識だ」

「常識なのか?」

「IS業界だと一般常識だ」

「雲の上の住人なんだなぁ」

「天上の住人であるお前さんら姉弟に比べれば、月とエベレストだろうけどね」


感心したり、驚いたり、落ち込んだりする一夏を見ながらイチゴ牛乳をストローでちびちびと飲む。


「あ、そう言えばさ」

「ん?」

「ちち、千冬姉と、ねね、寝たってう、噂! ホントなのか!?」

「ブホッ!?」

「きゃっ、汚いですわ!」


あまりにも予想の遥か斜めを天元突破する一夏の発言に、透夜はイチゴ牛乳を噴き出し咽せる。

背中の方ではひそひそ声が聞こえる。


「その噂の出どころってどこ……」

「そんなことどうでも良いだろう! 確かに透夜は良い奴だが、こっちは色々心配なんだ!」

「わかったわかった。少し落ち着け」


噴き出したイチゴ牛乳をティッシュで拭いてリセッシュする。


「織斑先生を押し倒したのは事実だ」

「「「「「ええ〜〜〜〜〜!!!!」」」」」

「騒ぐな! 今から説明してやる!!」

「「「「「………………」」」」」


一喝してクラスやその他の女子を黙らせる透夜。年上故の凄みで周りを黙らせる。


「昨日俺が倒れたのは知ってるな? 実はまだ本調子でもないところに足をもつれさせて織斑先生に迷惑をかけてしまっただけだ。それ以上でもそれ以下でもない。これ以上尾ひれ葉ひれつけて変な噂が蔓延するのならば、俺も動かざる得なくなる上に織斑先生にも迷惑がかかる為、女子が噂好きなのも知っているがあまり突拍子もない噂を広めないように。わかったか? わかったならば返事をするように、わからん奴はお仕置きだからそのつもりで」

「「「「「ラジャー!」」」」」

「お兄様のお仕置き……」

「きっと手足を縛って――」

「蝋燭プレイ…キャッ」

「この変態共が……!」

「もっと! もっと罵ってくださいお兄様!!」

「お馬鹿な私達を躾てくださいませ〜!」

「躾プレイからの肉奴隷END……ガク」

「もうヤダ〜、この変態クラス…」

「あ〜、えっと、ほんとに何もないんだな?」

「俺の恩師に誓ってそれはない」


まったく、シスコンを相手にするのも疲れるんだぜ。


「むき〜〜〜っ!」

「ところでこの娘は?」


人の会話に割って入ろうとしたのと一夏のアホさに頭が痛かったから無視してたけど、いい加減にそれはかわいそうだし、一応知ってるが一夏に訊いてみた。


「あ、俺のクラスメートでセシリア・オルコットだ」

「へえ、はじめましてウォルコットさん」

「馬鹿にしてますの! それに私はオ・ル・コ・ッ・トですわ!」


声は耳に聞こえは良いが、すまんオルコットさん。俺は大佐派だ。

あと同じオルコットならウォルコット中佐を呼んでくれ。同じ女性に囲まれて苦労する側の人間として、あの人の苦労武勇伝を聞いてみたい。

このネタわかる人居るかな?


「いいですか!私に話し掛けられるだけでも光栄ですのに――」

「やるよ一夏」

「お、サンキュー!」


とりあえず喚かせるだけ喚かせよう。そう思いながら一夏に飲みかけのイチゴ牛乳をプレゼント・フォー・ユー。


「――って、聞いてますの!」

「聞いてますわ。それとあんまり近寄らんでくれ。香水の香りで酔ってくる」

「あ、あなたという人は〜〜〜〜〜っ!!」


そこで時間切れのチャイムが鳴る。2人は千冬が怖い為ダッシュで教室へ。


「はぁ……」


ようやく解放された透夜は溜め息を吐き、次の授業の準備に移る。






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