無窮の冥廻
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100周目
なんか知らんが股下に懐かしい感覚が――
男の娘なベルンカステル卿の誕生です。ありがとうございます。
まぁ、このベルンカステル卿ボディは色々と役に立つので嫌いじゃないです。
ゆかり様ヴォイスも役得っす。
そして今回は四歳で家出。弟が狼になって掘られそうになったから。
そこからとりあえず躰を鍛えつつのようやく理論構築が出来た魔法の研鑽を始めた。
そして突撃槍-ランス-の武装錬金、ブレイヴハートに変化が起こった。
金属粒子レベルのサイズで鉾に呪符文様が描かれ、魔術的存在に対しては絶大な効果を発揮するようになった。
ディスカッター化したよ……。
しかしサムライアーマーは依然変わらずだ。
自分で造ったのに武装錬金も色々と謎だ。
「武装錬金――!!」
ブレイヴハートを展開し、その表面に一瞬魔術紋様が浮かび上がった。
「エネルギー全開!! ディバイン、ブレイカーーーーー!!!!」
鉾全体に紅い光を纏い、エネルギーの噴射と自身の踏み込みで突貫。
魔術というか霊質的な存在にまで干渉できるブレイヴハートのお陰で、今周目は退魔師モドキのような事をしている。
今回の仕事は邪霊祓いとでもいえばいいか。
京都にて暫し悪霊退治をして生計を立てていた。関西呪術協会なんぞないこの世界ではそれぞれの家々が力が弱かったり牽制しあったりするもんで、フリーの魔術師や退魔師なんかはそれなりの需要があった。
京都観光しつつ、悪霊や悪霊の上位版の邪霊なんか、偶に鬼とか天狗とか化け狐に土蜘蛛なんかの妖怪退治をしていたら、半妖の幼女を保護してしまった。
人間と天狗の間に産まれた子らしい。
年は5歳前後か、瞳は紅く、髪の毛と背中の翼は白かった。
名前は無く、両親もわからないのだとか。
妖怪に出来た知り合いに訊けば、半妖は禁忌される存在だそうな。まず幸せには暮らせないのだとか。
無限螺旋の煉獄のなか、2000歳越えの人生で初めての子育てに踏み切った。
少女の名前は刹那とした。
かなり皮肉だが、これからも続く永獄の中の刹那の時を過ごす娘だから『刹那』と名付けた。
名字は葉加瀬でも良かったが、今後を踏まえて『桜咲』とした。
刹那から連想したからそんな名字になった。男の子だったらF・セイエイなんてDQNネームになっていたのかも。
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刹那を連れて京都を離れた俺は、アーカムシティへ向かった。あそこなら、半妖の刹那でも『善』である限りは平穏に暮らせるだろう。
異界のものの気配に敏感な夜鷹-ウィップアーウィル-の鳴き声が不気味に聞こえ心地良いちょっとした郊外に居を構えた。
通称大十字アパートに――
このアパートは必ず同じ場所に有り、何気に交通の便も良い立地だ。
まぁ、街の支配者が住んでたボロアパートだ。本人の自覚なしに思い出に浸る感じで建てるのだろう。
さて、貯えがあるとはいえ、刹那の為にできるだけ定期収入のある仕事に着きたい。しかも定時上がりの仕事。
だがしかし、中学卒業どころか小学校にすら通っていない俺に真っ当な仕事が選べるはずも無し、しかし子どもにニート呼ばわりはされたくない。
「ハァ、いったいどうしたものか……。む?」
ふと目に留まった広告版。
しかし其処から魔の気配を感じた。
『腕力あり有能かつ想像力に乏しい青年を求める。
これらに加えて秘書の仕事を果たせるものは以下の住所に来られたし。
金銭的利益になるやもしれない』
そして、その下には掲載人の名前がこう書いてあった。
「ラバン・シュリュズベリイ――!?」
意外な所で意外なビックネームを発見した。
秘書として有能かどうかわからないし、まだ青年とは言えないが、錬金学や魔術理論に練金学に関しては、ループを繰り返すマスターテリオンに胸を張って自慢は出来る自負はある。
「いってみるか……」
とりあえずは明日だな。
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「ただいま」
「あ、理華さんおかえりなー」
玄関ですぐリビングだから迎えも早い。
アメリカンなアーカムシティで数少ない日本語で喋る空間な我が家。
「すまないな、1人で留守番させて」
「ええんよ。うちさびしぃないもん」
「そうか」
頭を撫でてやれば気持ち良さそうに「えへへ」と笑う刹那は癒やしだ。
「夕食は何にしたい」
「んーとなぁ。ハンバーグがええな」
「委細承知した」
刹那は見かけの可愛さに反し?結構味覚が男の子っぽい。
まぁ、男の俺と飯を食べてりゃあ俺好みの味覚と似たようにはなるんだろうな。
なんというか、幾周も前に孕まされた時に自分で子育てと言う物をきっちりと勉強すべきだった。
と思ってもあとの祭りだし、自分が出産するというのが怖かったというのもある。
まったく、薄情な人間だ。
「刹那、明日は遅くなるかもしれん。夕食は一応作って行くが、1人で大丈夫か?」
「わかったわ。じゃあかわりにいっしょにおふろはいろ」
「ああ。それくらいは安い用だ」
食事の後に約束通りに一緒に風呂に入っては背中の流し合いをした。
そして翌日、俺は街の外れにある小さな家の前に居た。
時間は夕方、空が不気味に紅く染まる逢魔ヶ刻。
こじんまりとした家のドアをノックしようとした時、まるであらかじめ知っていたかのようにドアが内部から開かれる。
「おや、こんな時間にこんな家に何用かな? お嬢さん」
姿を現したのは長身で筋肉質、壮年の雰囲気を纏わせたサングラスの紳士だった。
老年ではあるのだろうが、まったくそんな事を感じさせない若々しい雰囲気がその紳士にはあった。
「こんばんは、お初にお目にかかります。私の名前は葉加瀬 理華と申します。ハスターの風を授けアヱテュルの海を往く盲目の大賢者、ラバン・シュリュズベリイ博士」
「ほう、君があの葉加瀬女史だったかね」
「私をご存知で?」
「極東方面では君は有名だよ。不思議な術や武器を使い、邪悪を狩るモンスターハンターとしてね」
まさかシュリュズベリイ博士にまで噂がいくほどに有名になっていたとは、以後は少し自重しよう。
「それで、君程のハンターが私に何か用かね?」
「求人広告を見ました。よろしければ雇っていただけませんか?」
おそらくはハントの協力要請か何かと思ったのか? 求人の話題は予想外だったのか? あのシュリュズベリイ博士にしては一瞬だが呆気にとられていた。かなりレアなものが見れたぞ。
「君程のハンターならば欲しがる場所はいくらでもある上に、私の下に就くよりもフリーの方が何かと収入は良いはずだが?」
「ただ富を得るのならばそれでもよろしいですが、これでも人の親でしてね。学校も出ていない上に根無し草なんて、子に恥を欠かせたくはないのですよ」
志望動機を話すと、シュリュズベリイ博士は口元を笑いの形に作ると言葉を放つ。
「泣く魔も黙る東方の魔女も、子には勝てなんだな」
「ええまったく。可愛らしい娘ですので」
「しかし噂に聞けば半妖の娘らしいが」
「義理の親子です。それにあの子は善き者に育ててみせますよ」
俺の言葉の決意を読み取ってか、シュリュズベリイ博士の顔は険しい。
「辛き道やもしれんぞ? 君も、そして子も」
「覚悟はあります。いざという時の事も考えています」
「よろしい。では歓迎しよう。外も暗い事だ、入りたまえ。茶の一杯はご馳走しよう」
「お邪魔します」
シュリュズベリイ博士に招き入れられて部屋に入る。
しかしそこはほとんど何もないといっていいほどの部屋だった。
暮らしていると必ずあるはずの生活臭がほとんど感じられない。
あるのはベットと机。そして何より目立つのは机の上にある大量の本と何やら書き込まれた紙。
そして、机の中央にある一冊の『書』だった。
そこから感じる魔の気配は知っている。
「『セラエノ断章』――」
「む? ああ。アレは私の記した書でね。セラエノの石版を訳した魔導書だ」
やはりクラウディウスの持っているセラエノ断章とは感じが違う。文字通り『風』が違うとでもいうべきか。
少し大きなテーブルの備え付けのイスを勧められて座る。
シュリュズベリイ博士はコンロにやかんを置いて火を付け、セラエノ断章の置いてある机のイスに座った。
「しかしなんだ。こうして見れば普通の麗しいお嬢さんにしか見えないのだがな」
「人を外見で判断するのは軽率ですよ。特に魔術師は」
「その通りだ。して葉加瀬女史、君はどの程度戦えるかね?」
その問いには若干困った。
俺は未だにダコンは倒しきれた験しはなく、破壊ロボに無双は自慢にはなりそうもなく、アンチクロスとは相討ちがやっとだ。しかし邪神ハンターに嘘を吐くわけにもいくまい。
「状況によりますが、5=6<小達人(アデプタス・マイナー)>Adeptus Minorとサシで相討ち出来るかできないか。負けないにしても勝てないというくらいですかね」
「ほう。それは頼もしい限りだ。次に語学はどの程度かね?」
「英語と日本語はもちろんのこと、中国語、韓国語、ロシア語、フランス語、ドイツ語、ラテン語にギリシャ語――くらいですかね、たしか」
「十分過ぎる程の語学力だ。やはり錬金術を学んだ副産物かな?」
「そうですね。錬金術の発祥はエジプトだなんだのとありますが、欧州方面の方が色々と残っていますから」
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