星光の魔王-シュテル・ジ・エルケーニヒ-
□第H話
1ページ/5ページ
高町なのはの朝は早い。
太陽の昇りと同時に目を覚ます。
半覚醒状態のまま身体を起こし、一緒に寝ている使い魔の頬に口づけをしてから起きる。
着替えを引っ張り出して風呂まで向かい、シャワーの朝風呂。
寝汗やらを落として魔術で身体を瞬時に乾かして着替えを済ませる。
まだ世も寝静まっている時間から起きる理由は魔術の実践の為だ。
錬金術師としては魔導師のスキルを高めるより魔術師のスキルを高める方が良いからだ。
身体に魔力を通し、効率的な魔力運用を模索して実践する。
強化した身体で握る銃は赤と黒を基調とした、兇悪なフォルムの自動拳銃-オートマチック-と銀一色で造られた、流麗なフォルムの回転式拳銃-リボルバー-。
重厚なる黒。苛烈なる赤。装飾を施されながらも無骨。何より凶暴。
前面下方に設置された弾倉に闘志を装填する破壊の象徴。自動拳銃『クトゥグア』。
洗礼された銀。耽美なる銀。研ぎ澄まされた刃の如く美麗。何より冷酷。6ある弾倉の最深部より死を吐き出す殺意の象徴。回転式拳銃『イタクァ』。
なのはが造り上げたレプリカでありオリジナルのアレには数段劣る贋作だが、対人遠距離兵装としては申し分ない威力は持っている。
その二挺の魔銃を手に持ち舞い踊る。
空の薬莢を排出しながら銃を上に投げる。
新しい弾倉を用意して落ちてきた銃に神懸かった速さで弾丸を再装填。
その一連の動きを流れるようにこなしていく。
御神流が小太刀二刀流である為になのはが選択した戦い方は二闘流-トゥーソード/トゥーガン-。
二闘流は読んで字の通り、二挺拳銃と二刀流で戦う意味を言う。
彼の魔導探偵の息子の戦い方だ。
「おはようなのは」
「おはようございます。お父様」
父・士郎が起きてくると御神流剣士としての修行が始まる。
先ずは素振り1000回からだ。
なにより基礎が出来ていないなのはは、まずは剣を振るう基礎から教えられた。
素振りという課題はまず、剣の道の基本だ。
基本出来なくして基礎は出来ず、基礎なくして応用など有り得ない。
ただ実践を繰り返して精錬する魔術とは違うのだ。
何千、何万、幾億回繰り返して身体に基本を染みつけなければ基礎は成り立たない。何事も基本が欠けていれば基礎はガタガタになってしまう。
そんなガタガタの付け焼き刃ではいつかボロが出るもの。
戦いが目前に迫っていようとも焦ってはならない。焦りは事を仕損じる本であるからだ。
時間を掛けて確かめるような振り方を一、十、百と数字が三桁に入ったところからスピードを上げる。
強化などまったくしていない腕は痺れも疲れも忘れ去り、ただ無心に振り下ろす。しかし振り下ろすだけでなく、一振り一振りをピタリと刀身を制止させる。その動作がまた腕に負荷をかける。
千回目を振り下ろしたところで刀身をピタリと止めたまま息を整える。
「よし、一旦休憩にしよう」
「はい。お父様」
呼吸が整ったところを見計らって告げられた言葉に従う。
刃を越しの鞘に戻して士郎の所まで行き一礼してから休憩になる。
汗を拭きながら水を飲んで水分補給する。
といってもこれ以上なのはがやるべき事はない。素振り千回だけで腕は限界だからだ。
朝と夜に素振り千回。
それが今のなのはがやるべき課題である。
→