星光の魔王-シュテル・ジ・エルケーニヒ-

□第8話
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海鳴市――

その街は海に隣接しながらも山が程近く、自然豊かな街である。

そんな街に唯一と言って良い存在が居る。

錬金術師-アルケミスト-高町なのは。

古に失われた錬金術を、独自の観点から復活させた錬金術師にして魔術師である。

その内には輪廻を外れた魂が宿り、本来の『高町なのは』という少女とは『別の存在』が彼女として日々を生きていた。


「おはよう、なのはちゃん」

「おはようございます。すずか。…アリサはお休みなのですか?」


通学に使うバスの一番後ろの何時もの席には、すずかが居るのにアリサが居なかった。

帰りは塾だなんだの関係でバラバラになりやすい私達ですが、行きは必ず一緒のバスで通っている為に休みではないのかと私はすずかに問う。


「うん。携帯にメールしてみたらね、今日は熱が出ちゃったからお休みするって」

「そうなのですか」


あの元気一杯のアリサが学校を休むということ自体珍しくも、まだ小学二年ともあれば病気をして身体の免疫力を高めてなんぼですからね。早く元気になる事を祈るだけです。

とはいえ、街の様子が様子ですから心配になります。


「なのはちゃん、もしかしてアリサちゃんのこと考えてる?」


ふと気づけば、すずかが私の顔を下から覗き込む様に近づけていた。


「ええ。あのアリサが――ですからね。心配にもなります」

「むぅ…」


私が肯定すると、すずかは少し頬を膨らませた。


「どうかしたのですか?」

「…なんでもないよ」


顔を離したすずかは私の問いにぶっきらぼうに答えた。

拗ねさせてしまったようですね。

私はそこまで唐変木な自負はありません。

すずかが私に対して友情とは別の想うところがあるのは感じています。

私自身、すずかの事を好ましいと思っています。この想いが友愛を超えたものなのかは、私にははっきりとはわかりません。何故ならば、私は家族愛以外の愛をとんと知らないからです。

友情すら微妙である私を想ってくれる家族以外の存在というものは、私にもどう受け取ればいいのかわからないというのが妥当でしょう。

ただ――


「な、なのはちゃん!?」


いつもはすずかがして来るものですが、今日は私の方からすずかの肩に身体を預けてみます。

身を寄せることで感じる安らぎと幸福。

これをいったい何時まで感じる事が出来るのでしょうか。


「なのはちゃん?」

「学校に着いたら、起こしてください」


でも今は、この安らぎに身を任せて微睡みに身を委ねるても罰は当たらないでしょう。






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