星光の魔王-シュテル・ジ・エルケーニヒ-

□第4話
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永全不動八門一派・御神真刀流小太刀二刀術――

それが御神流の正式名称。

二振りの小太刀を武器とし、飛針-とばり-(棒手裏剣のようなもの)や鋼糸-こうし-(ワイヤーのようなもの)などの暗器、さらには体術なども用いた総合殺人術である。

御神家は表立った要人警護を主とする御神流を、そして不破家は要人暗殺を主とする御神流・裏を伝えている。

父・高町士郎の旧姓は不破である為、高町家で教えられている御神流は『裏』ではないかと思われるが、それをなのはあまり気にしてはいない。

どちらの流派でも人を殺す術であり、護る為の力であることには変わらない。


「なのは、最後に一つ確認したいことがある」

「なんでしょうか?お父様」

「……お前に守りたいものはあるか?」


それを聞いたなのはは、一度瞳を閉じてから思い浮かべたのは、家族一人一人の顔。

そして友人3人の顔。

そして自身の姿――高町なのは。


「はい。あります」


高町なのはが生きているのなら、この身はいずれ返さなければならない。

火傷の痕はその時に考えるとして、それまでなのはは高町なのはを護らなければならない。

そしてこの街を守らなければならない。

魔法少女として、1人の人間として。


「『私』は私を――高町なのはを護りたい。
こんな『私』を友と呼んでくれる友人を護りたい。そして家族を護りたい」


それは『彼』の真摯の想いだった。

自分に何を、どこまで出来るのかはわからない。それでも『彼』は護りたいと思うものがたくさんあるのだ。

護る時にこそ真価が発揮される御神流。

士郎は『彼』の瞳を見て表情を和らげた。


「そうか。君にあはある意味愚問だったかもな。わかっているとは思うが、御神流は剣術ではなく殺人術だ。容易に命を奪えてしまう技だ。君がなのはだからじゃない。君が君だから俺はこの剣を君に教えよう」

「感謝します。お父様」

「いや。それよりも一つ約束して欲しい。この剣は護る為に教える、だから誰かを護るために使ってほしい。そして、誰かを護る――助けると決めたときには、躊躇してはいけない」

「わかりました。約束します、私の魂に」


なのはは自身の胸に手を当てながら士郎に誓う。もとより私欲の為に振るおうとは思っていない。いや、間接的に私欲も混じっているが、それでも護る為に振るうのには変わらない。

その誓いを立てたのが2年生になって直ぐの頃だった。






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