星光の魔王-シュテル・ジ・エルケーニヒ-

□第1話
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『高町なのは』に欠かせないものは絆だろう。

家族や友人や仲間との絆があればこそ、彼女はああも強かったのかもしれない。

支えてくれる人の存在は時として安心出来て、心強く思えることだろう。

だが今も昔も、なのははある意味『家族』という確かな絆を知らない。

転勤族だった前世では友人は無きに等しく、しかも両親は離婚して父との絆は薄れ、弟はなんだかでいつもバカにされていて兄弟の絆と言うのはどんなのかわからない。母とも上手くは行かず、しかも引き籠もりになってからは終ぞ言葉を交わした記憶すらない。

自分の殻に閉じこもったが故の『孤独』。

前世の様子はそんな感じだ。

こちら側では高町なのはとしての家族の絆はとても良いが、『彼』としては、高町家の家族が見ているのは高町なのはであって自分ではない。

なのはにとって、『絆』という言葉は最も意味がわからず、むしろ嫌いとも言える物だろう。それ以上に他人との関わり合いがあまり得意でないなのはとしては、自ら進んで友人や仲間を作れる人間ではない。

故に入学してから数ヶ月が経ってもなのは教室で独りぼっちでいた。

いや、むしろ精神年齢が違い過ぎて真っ当に話せる相手が居なかったというのが『彼』の心を余計に独りにしていた。
肉体年齢的には避けて通れぬ道だ。

仕方がないとも思う。

だが、彼にして言わせれば拷問か新手のイジメでしか無かった。

彼は休み時間の合間は教室から離れて過ごすことが多かった。

昼休みも殆どがおにぎりやサンドイッチにしてもらって、屋上で適当に食べてから図書室に籠もるようにしていた。

人間。そうそう簡単に中身を変えるという事は難しい。

しかし、そんなとある日だった。


「あ、あの……」

「…なんでしょうか?」

「わ、私、月村すずか」

「…高町なのはと申します」


これが久しぶりにして最初の友人との始まりの会話だった。





To be continued…
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