香水 K×A

□普遍的なひととき
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ー結局はそう、自分次第だし。

そんなの、分かってる。


「最近ね、好きな人ができたんよ」

子どものように無邪気に笑い、私の指に自身の指を絡ませながら彼女が言う。

胸が、騒いだ。




3人でお泊まり会をする予定が、のっちが急用ができて来れなくなってしまった。
急遽中止にしようかと迷ったが、あやちゃんからの誘いで二人きりだけど実施する事になった。

晩ごはんは既に仕事帰りに済ませていたから、あやちゃんの家に着くと軽くお酒を呑みながらガールズトーク。
3人でいる時の笑いの絶えない時間とはまた違った、ゆったりとした、けれど堪らなく幸せな時間を過ごした。

順番にお風呂に入って、今は二人してソファにもたれ掛かりながら、他愛もない話をしている最中だった。

そんな中、突然彼女から告げられた事実。

「そうなんじゃ」

私は穏やかに笑ってみせた。
わりと自然に応対したつもり。
心の中の動揺を、彼女に読み取られたかどうかは自分では分からない。

化粧を落として幼くなった顔を綻ばせながら、彼女は嬉しそうに好きな人の事を語り出す。
私は柔らかな髪を優しくといてあげながら、黙って彼女の話を聞いていた。


彼女の好きな人の話題には馴れた。
それに傷つく自分には馴れた。
傷ついた自分を隠すことには馴れた。


馴れたから、前よりは平常心でいられてるはず。
優しい目で、彼女を見ていられるはず。

「ふふ、うまくいくといいね。」
「うんっ」

心にも思っていないのにしれっと口に出来てしまう自分が、嫌い。
要するに、馴れてしまっている自分が嫌い。

「ありがと、優しいねぇゆかちゃんは。」
あやちゃんに嫌われたくなくて、優しいフリした自分が嫌い。
「そんな事ないよぉ。親友として当然でしょ?」

親友。
そんな関係上にある人を、好きになってしまった。
モラルも理性も、言う事をきかなかった。

あまりにもゆからしくない。

あやちゃんが好き。

本当は、気持ちを伝えたい。
馴れ、なんて打破したい。
想像もつかない未来を、彼女と二人で歩んでみたい。

…でも。

葛藤しながらも、結局は今のスタンスを維持しようと心のどこかで揺るぎない決意を下している、そんな自分が嫌い。

「ゆかちゃん大好き。」

何も知らない彼女。

だから、そんな風に私に甘え、縋ってくる。
知らなくていいよ。
あなたは何も知らない、真っ白なまま、私の側に居てくれればいい。

私の内側の醜い部分に気づかないで、隣で笑っていてくれればいいの。


「私も、あやちゃんが大好きだよ」

彼女の肩を引き寄せ、瞳を閉じる。

きっと私は、天変地異でも起こらない限り、
これから先も蓋をして、内側の自分を隠していく。

親友として、あやちゃんのことをずっと側で見てるから。


天変地異か、起こらないかな。


fin
 

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