香水 K×A

□真夜中の逆転劇
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その言葉で少しおとなしくなったゆかちゃんのさらさらの髪を撫でたら、ふとさっきの胸の痛みが甦った。

誰より愛しいのに、焦らしたり、痛め付けたりして。
あまり自ら与えることをしなかった。
自分で作ったルールに縛られてたの。
どうしようもないね。


「ごめんね、今朝は意地悪言って。」

「…やだ。」

それでも頑なに意地になっているゆかちゃんが可愛くて、つい顔が綻んでしまう。
今すぐ抱き締めたい衝動に駆られた。

「ゆかちゃん、起きて」

ゆかちゃんは、少しの間黙って伏していたが、やがておもむろに起き上がった。
仏頂面で突っ立っているゆかちゃんの手を引いて、ソファに掛けた膝元に座らせる。
向かい合った状態で額に唇を寄せると、小さく拒んだ。
「可愛い。」
私は顔を緩ませたが、ゆかちゃんはキッと睨む。

「そんな事でゆかは騙されない。あ〜ちゃんのこと、まだ許してないよ。」
「じゃあ、どうしたら許してくれるん?」


ゆかちゃんは少し私を見詰めたあと、私の肩を掴んだ。

「え…っ、ゆかちゃ…」

そのままぐっと力を入れ、ソファに押し倒された。
長い髪の毛が降ってきて、帳のように私を覆い隠す。

「ちょっと、ゆかちゃんっ」

ゆかちゃんはその細腕からは信じられない力で両の手首をホールドしている。

「待ってっ…!」

「待たない。たまには、ゆかに触らせてよ。」

そしたら許してあげる、とゆかちゃんは妖しく微笑むと、私の耳裏に舌を這わした。
ゾクッと鳥肌が立つ。
再度手を振り解こうと足掻いたけど、無駄だった。
ゆかちゃんの暴走を、制御できない。
脳内のシステムが、プログラムのエラーに混乱している。
焦燥が私を支配した。
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