オリジナル短編集

□バイバイ 羊さん
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────────キーンコーンカーンコーン──────────



下校時間を知らせるチャイムの音で目を覚まし、黒板の横の時計を見る。


「また寝ちゃった…。」

最近、異常なまでの不眠症。
昨日なんて、朝まで羊が柵を飛び越えるのを数えてた。
途中で何匹かわかんなくなったけど。
そのせいで、授業中によく寝てしまう。
なんで学校だと寝られるんだろ?


グーと、あたしのお腹が空っぽであることを主張する。
「お腹空いたな。
コンビニ寄ろっと」

フラッと立ち上がり、カバンを掴むと、廊下に人影が見えた。



「あれ?新井か?
何、お前、まだ寝てたわけ?」
笑いながら教室に入ってきた、ギャーギャーうるさいのは、片桐祐哉。
あたしとは犬猿の仲というやつだ。
あたしの、不眠症の原因。
犬が猿に恋しちゃったってこと。



「うっさい。
あんたのせいなんだから…」
「ん?何か言った?」
恥ずいっ!
あんたのせいとか……。


「なー、お前、コンビニよんの?
もう遅いから送ってやるよ。」
今は12月。
午後5時半をまわった今、外は真っ暗。

あたしは、顔がカァーっと赤くなるのを感じる。


「べっ、別に大丈夫だもん!
あんたなんかに送ってもらうくらいだったら変質者に襲われたほうがましなんだから!」
あーぁ……。
また可愛くないこと言っちゃった。

「そ。
でも、やっぱ送ってくわ。
俺が大丈夫じゃねーから。」
……へ?


「それ、どういう意味?」
「〜〜っ!
だから!お前が襲われたらどーすんだよ!」そう言って、カバンを持っていない左手で顔を隠した。
その時、眠れない時に感じるモヤモヤがふっと消えた気がした。


「片桐、今日だけ。
今日だけ、送らせてあげる」
ニヤッと言うと、片桐が一瞬だけ間をおいて、ニヤッとした。


「肉まん、お前のおごりな。」
「は?あんたがおごってよ」
「じゃあ、明日な。
「うん」



わけわかんない。
でも、そんな、馬鹿みたいな時間が楽しい。







「片桐」
「ん?」
「……す、好き。」
「俺も。」
空いてる右手と左手が絡まる。





バイバイ。羊さん。
あたし、今日からはちゃんと寝れるよ。





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