魔法戦記リリカルなのはRefrain

□prologue 機動六課解散前夜
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「冬矢さん! おはようございます」


「おはよう、悪いな。少し遅れた」


 先ほどにも紹介があったように御薙冬矢。
 なのは、フェイト、はやての幼なじみにして親友同士。
 幼少期はなのは、フェイトの敵という立場だったが、フェイト同様になのはの想いに撃ち抜かれ……。
 様々な背景があり、フェイトと同様に保護観察処分という形に相成った。
 それ以来の付き合いであり、このゆりかご事件を解決した“機動六課”の設立時にはやてより声がかけられる。
 機動六課副部隊長、そして前線メンバーの総指揮スターライトニング0というコールサインで戦闘でも活躍する。
 そして、なのはと同様に共同教導ということで、同じ戦技教導官であるなのはと共にティアナたちを鍛えた人物でもある。
 ティアナたちからも絶大の信頼を得ており、空戦陸戦での近接戦闘ではトップクラスの実力保有者でもある。


「もう、冬矢くん。フェイトちゃんとのイチャラブはこれが終わってからだよ」


「いや、別段何もしてないんだが? というか少し話していただけで……」


「いや、冬矢。あれは普通の会話じゃないと思うよ、ねぇ、みんなもそう思うでしょ?」


「あははは、冬矢さんとフェイトさんですから」


 ユーノの問いかけにエリオが笑って答える。
 ユーノ・スクライア。
 時空管理局《無限書庫》司書長を務めており、若き考古学者として名を馳せている。
 なのはに魔法を教えた張本人でもあり、親友同士。
 なのはに恋心があるも、伝えられずにいる。


「ふむ? まぁそれはいいとして……なのは」


「どうしたの?」


「はやてたちは後から来るって言ってたよ。先に始めといてって」


「ん〜、そうだね。じゃあ先にやるね。あ、訓練を始める前に少しお話良いかな? 冬矢くんも少し時間もらっていい?」


「あぁ、いいよ」


 なのはの想いを察した冬矢はタイムラグなしで即答した。
 おそらく、ティアナたちに最後の訓練として少し話をするんだろうと。
 そんなに時間もかからないだろうと思った冬矢はこの時間を利用して、ユーノに話しかけた。


「ユーノ、少しいいか?」


「ん? どうしたの? 急に改まって」


 冬矢の表情を見て、真面目な話だろうと思ったユーノは……。
 少し背筋を伸ばし、まっすぐに冬矢と向き合った。


「丁度聞いておこうと思ってね。なのはも今はあっちで話に集中してるから聞かれる心配もない」


「????」


「単刀直入に聞くよ、ユーノ。なのはのこと、どう思っている?」


「え? どう思ってるって……そりゃ大事な親友って思ってるけど……」


 冬矢の質問の意図をあまり理解しきれていないユーノはそう答えた。
 いきなりのことでさすがのユーノも言葉の本質を見極められなかった。
 そんな様子に苦笑を見せた冬矢は再度言葉を言い換える。


「違うよ、なのはを……一人の女性としてどう思ってるかってことだよ」


「え、……えと、と、冬矢……? 一体、どうして、そんなことを……」


「どうして、か。そうだな……正直、見てられなかったからもあるし……俺にとってこれがなのはへの恩返しの一つだから……」


「え? 最後の方なんて言ったの?」


「いや、気にしないでくれ。それよりどうなんだ? なのはのこと。好きなのか? 嫌いなのか?」


 茶化した様子もない。
 真剣な表情で冬矢はユーノを見据えていた。
 ここまで言われたら冬矢の話の本質を見抜けないほどユーノは間抜けではない。
 ましてや今のこの状況で煮え切らない返答すら出来ない。
 それほどまでに冬矢は何か真剣な表情だった。


「…………好きだよ、一人の女性として。心から」


「そっか、よかった。だったら……告白はしないのか?」


「ははは、出来たら苦労はしないよ。振られたら怖いから……」


 ユーノは視線を冬矢から外し、地面へと向けてしまう。
 その表情は少し悲しそうであった。
 誰もが抱く伝えたらどう返事が来るか、怖い思い。
 そんなジレンマに。


「けど、いつまでもそんなことじゃ何も前に進めないよ。なのはに言い寄る男性なんて相当数の人数が居る」


「知ってるよ、僕だって……。なのはは十分魅力的な女性だしね。だけど、その分、僕は彼女と釣り合うのかって考えてしまうんだ……」


 特有の負のスパイラル。
 ネガティブな方向に考えてしまうのは人の常だ。
 だが、それは逃げの一つでもある。
 そんな様子のユーノに冬矢は一呼吸空けて……。


「そうか、だったら今から俺が言うことは独り言だ。気にしないでくれ。なのはは俺にとって大事な家族だ。一人の頃から解放してくれた。それ以来ずっと俺はなのはと共にいる。大事に思っている。けど、俺にはなのはを幸せにしてやることができない」


「………」


「俺が最も守りたいと思った女性と出会ってしまったからだ。そんな俺を応援してくれたなのはを、任せられるのはユーノだけだと思っている。ユーノだったら俺は認められる」


「冬矢……」


 ユーノは冬矢に声をかけようとした。
 その時だ。


「冬矢くーん! ちょっと来て〜!」


「あぁ、わかった。すぐ行く。ユーノ、後悔するならやってから後悔した方がいい。じゃあ、またな」


 そう冬矢は言い残し、ユーノのところから……。
 なのはのもとへと駆けて行った。
 といっても軽く走っただけであるが。
 ユーノは冬矢の後姿を見ていた。
 色々な思いを持って。


「ありがとう、冬矢」


 自分のことを心配してくれた冬矢に小さい声でそう告げた。
 冬矢の言葉でどう一歩を踏み出すか、ユーノは冬矢に言われた言葉を脳内でシュミレート。
 決意を決めるために。
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