黒子本棚
□緩やかな日常
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氷紫。
「飽きないの」
「飽きないな」
「そう」
さっきからずっと、俺の髪をいじっている。別にそれ自体はよくあることなのだが、かれこれ2時間もこの状態だ。流石に異常だと思った。
ソファに座った彼の足の間に座らされ、ずっとそのまま。頭を撫でる手が気持ちいい。
俺の頭がいいようにされている間、ただお菓子を食べながらテレビをみているだけ。普通なら1番組終わる間までには気が済むらしく止めてしまうから、お菓子が切れる何てことはないのだ。
「室ちん、お菓子なくなった」
「そんなに食べると太るぞ」
「別にいいしー」
まだ彼は俺の髪をいじっている。
「飽きないの」
「飽きないな」
「そう」
このやり取りも何回目だろう。
「室ちん、お菓子たべたい」
「お腹減ってるの?」
「違うけどー」
「夕御飯、食べれなくなるよ」
「食べるしー」
彼は俺の髪をいじっている。ということは彼の顔は後ろにあるから見えないわけで、少しモヤモヤする。
ずっと髪の毛ばっかりをいじっているから、その間俺は彼の顔を見ていないと言うことになる。
なんだかちょっと髪の毛に嫉妬しそうだ。なんて馬鹿らしい。
「室ち
ん、」
「アツシ、お菓子は後でいいだろう」
「ちがう。お菓子も食べたいけど、俺ずっと室ちんの顔見てない」
そういった途端、彼は勢い良く俺の首もとに抱きついてきた。
そして俺と向き合うように移動すると、頬を両手で挟んで額をくっつける
「アツシごめんね?」
「…」
近い、顔が近いのだ。そりゃあ付き合って長いから、それなりのこともしてはいるけれど。
気恥ずかしくて目を背けた。
「僕の顔が見たかったんじゃないの?」
「…室ちんのフェロモン王子…」
ボソッと言ったら彼は吹き出して笑った。
「はぁ、笑った…アツシは可愛いね」
「意味わかんない」
「わからなくてもいいさ」
僕だけわかってればいいんだから。とか言っている。俺には到底理解できないけど、考えたりするのは頭のいい彼に任せておいて、俺は彼の肩口に顔を埋めた。
頭を撫でてくれた彼の手が心地よかった
\(^p^)/
氷室ラブ