ジョジョ本棚

□異常な患者
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チョコラータとセッコ









『チョコラータは信頼する先生、噛みちぎられてはいません』

回収したメモ帳の一番最初のページに書かれた文字。
何度も何度も書き足された跡があった。


『白い服の女は看護婦、首と腕は直接繋がっていません』

『隣部屋の彼は患者、頭はひとつです』

『青い服の人は清掃係、足はいきなりはずれません』

『赤い女は見舞い客、足は6本もありません』


こういう調子で延々と文字が続いている
今まで見てきた患者の中で、最も異常だと思った。彼の見る世界は一体どうなっているのだろうと、研究したくなった。


彼―セッコは実に不可思議な行動をした。

6:30 起床時間になったら目を開く。しかし動かない

7:00 朝食が運ばれてきたが、全く手を着けず、何故かコーヒーに入れるための角砂糖を食べる

8:00 朝食が下げられるとすぐにあのメモ帳を取り出し、読み上げる。
メモ帳はなんと13冊もあり、セッコはそれを全て読み上げていった。

11:57 突然ピタリと音読を止めた。メモ帳を全てベッド脇のスツールに仕舞い、布団を掛け直したところで、丁度12:00、昼食が運ばれて
きた。

12:15 また角砂糖を食べる。今回はデザートに菓子があったが、それも食べていたようだ

食事が下げられ部屋に人がいなくなるとまたメモ帳を取り出し、読み上げる。
どうやら人に知られたくないらしい。
いつも担当している看護婦も知らなかったようだしな




「ふむ…甘党か」

ここまできて一番わかったことはこれだ。
それにしてもセッコの糖分摂取量は多い。絶対的な量は他の患者と変わらないのだが、他の物を殆ど口にしようとしない、というか糖分しか摂取していないような食生活でなぜ看護婦は担当医である私に報告しなかったのだろう。
あの看護婦はダメだな…こんど実験台にしてやろう
カメラの映像はもう十分見た。となれば実際に話して調べてみようじゃないか。



彼の病室を訪ねる

「やあ、セッコ、調子はどうだ?」

セッコは布団に頭まで潜った状態だった。返事がない
私は努めて明るく話しかける

「何も言ってこないんじゃあ何も解らないなぁ」

セッコはやはり布団から顔を出さず、じっとしている。どうやらだんまりを決め込むつもりらしい
ならば
喋らない人間の口を割る方法として、隠し事を暴く、と言うことをしてやろうじゃないか

回収していたメモ帳をパラパラと音がするように捲る

「ところでセッコ、そのメモ帳なんだが、いったいなんなんだ?」
途端にセッコは起き上がり、私の手からメモ帳を奪い取った。

「ぐぉ…見たのかぁ?」

「さぁ、どぉ〜だったかなぁ?」
「見たんだな!」

「そぉ〜かもしれないねぇ?」

「ぐぁう…俺は考えるのとか、そう言うの苦手なんだよ」

頭を抱えて悩みだした
そろそろ本題に移り、もとい戻りたい。
明るく喋るのをやめた

「で、そのメモ帳はなんなんだ」
「これはぁ…おれが間違えないようにするやつだ」

「何をだ」

「…現実か、俺が見た幻覚かだ」

「さっぱりわからん」

「俺…しょっちゅう幻覚が見えるんだ…メモ帳に書いとかねぇと忘れちまうから」

「なぜ毎日読んでいるんだ」

「頭悪いからよぉ…何回も思い出さなきゃならねぇんだ」

そうしなくちゃあ間違えちまう。
そう言ってセッコは今まで見た幻覚を話してくれた。

先生、つまり私だが、噛みちぎられて這いずり回るらしい
白い服の女(看護婦らしい)首から腕が生えているらしい。その手でおいでおいでをしてくるのだという。
隣部屋の患者、とたまに顔を合わせるらしいが、
彼の頭が3つに見えるらしい。
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