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□悩みの種
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最近、真田の様子がおかしい。
何か悩み事があるような、そんな感じだ。
そして、部活が終わり、2人きりになった今もこの強がりな皇帝は俺の横で必死に何かを隠している。
「柳、跡部から『来週の水曜日に氷帝で合同練習を行なわないか』という誘いがあったんだが。」
「合同練習か…。データも取れるし良いと思うぞ。精市にはもう言ったのか?」
「…いや、まだだ。」
「そうか。なら、俺から精市に話しておこうか?」
「あぁ、頼む。」
いつもなら真田はあの綺麗に澄んだ瞳で俺を見ながら話すのに、今の真田は俺を見ようとはしなかった。
「真田。」
俺がそう呼びかけると、真田は少し弱々しい声で「どうした?」と返してきた。
「真田、お前は何に悩んでいるんだ?部活の事か?幸村が入院している事か?…それとも俺の事か?」
「!?」
俺が突然問い詰めたので真田は明らかに動揺した。
「真田は俺と付き合った事を後悔しているのか?」
「…。」
俺は、下を向いたまま顔を上げようとしない真田の顎を掴み、無理矢理こちらに向ける。
真田の顔は薄く朱色に染まっており、瞳は少し涙でうるんでいた。
「真田…。」
少しずつ自分の顔を真田の顔に近づけていく。
ゆっくりと唇が触れ合う。
真田は拒まなかった。
唇を離すと、真田は1cm背の高い俺の肩に顔を埋めた。
「…蓮二…。」
真田が艶っぽい声でそう呟いた時、俺は気づいた。
ーー真田…いや、弦一郎は、自分を名前で呼んで欲しかったのだ。
弦一郎を優しく抱きしめ、耳元で「弦一郎、愛している。」と言うと、弦一郎は顔を真っ赤にしながら、「俺もだ、蓮二。」と言ってきた。
おしまい。