ペルソナ4 小説

□君が消える前に
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君が消える前に






夏もそろそろ終わりを告げようとしている季節。
まだ夏服のままだから、いまの気温じゃすこし肌寒い。俺はそんなことを考えながら遊んでいたらすっかり日が暮れてしまった空を見上げた。

星が瞬いてる。
きらきら、と輝いてる。

「夏も…終わりか」

ふと呟けば、横にいた月森が俺を不思議そうな顔をしながら見た。

「お前との…最後の」
「…ん?なに、良く聞こえなかった」

"お前との最後の夏"
小さく言えば月森が俺の顔を覗く。俺は何でもない、と笑って誤魔化した。

月森が…好きになって。
俺の世界の見方が変わった
月森のおかげで光がさしたこの世界。今まではつまらない自分にうんざりしていた俺は月森のおかげで大事な事に気が付けた。


月森が、居てくれたから


「陽介?」
「……ん?」
「…何か陽介変」
「へへ、何時もだろ」

軽口を返すと、納得のいかない月森が眉間にシワを寄せた。

「…なんだよ、その顔はww気にすんなよー」
「…」

無理に笑えばますます顔を曇らせる月森を"しょうがないな…"という顔をして俺は肩を落とした。

そしたら。

ぐい、と腕を素早く引っ張られて身体が傾けば強く抱擁されて。

俺は全く動けず硬直。

「つ…きも…り?」
「……何でもない」

そう言った月森の声はあきらかに何も無くない声。震えて今にも切れて消えてしまいそうなその情けない声。
俺はドクン、と高鳴る心臓を感じながら月森の背中に手を回した。

「…陽介。陽介は…」
「?」
「……………」

きっと俺に何かを言おうとしてるんだろうな、とはわかったけど。月森はそれ以上何も言ってくれない。

「……ごめん」
「え?」
「……帰ろうか。」

わからない。
わからないよ、月森。

お前が言おうとしてること

なんで言わないの?
なんで言えないの?

俺がいけないの?






君が消える前に

せめての言葉を囁いて

悲しみを少しでも和らげて

少しでも痛みを無くして

君の涙は

他の誰よりも悲しい。

痛い、苦しい。

美しい。

名前を呼んで。

そうすれば俺は何度でも

笑顔で振り向くから。

君が消える前に。

せめての、幸せを


end




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