ペルソナ4 小説

□飛べない鳥
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飛べない鳥


「へぇ…飛べない鳥…」
「どうしたんだ、陽介」

静かな図書館で。俺は来週に控えているテストに備えて、月森に勉強を教わっていた。
古文がわからなくて、辞書を探していると偶々目に入った本を俺は手にした。

それは鳥の図鑑のようなものだった。

深い意味は無いが、ページを捲っていく。ある鳥のページで。その鳥は"飛べない鳥"の一種だと記されていた。

「ん。いや、ちょっと偶々見つけたんだけどさ…」

俺はその図鑑と古文の辞書を手にして、机に戻る。
必要な辞書を端に。図鑑を月森の目前で開いて先ほどのページを指さす。

「ほら、こいつ。"飛べない鳥"なんだって。いるんだな、ダチョウの他にもんな鳥」
「へぇ…はじめて見るな」

月森もその飛べない鳥に感心する。それを見ていて、ふと気になる事が出来て。それを月森に聞いてみた。

「なぁ。飛べない鳥ってさ…文字通り"飛べない"んだろ?」

「じゃあ"飛べない鳥"は周りの"飛べる鳥"を見て、どう思うんだろう」

俺は机に頬杖をついて、首を傾げて見せる。
月森は"うーん"と唸って少し考えたら。

「…"自分も同じ鳥なのに、何故飛べない?"」


「"僕の羽は何のために在るの?"」

「"僕は皆と同じなのに。僕は皆と…何が違うというの?"」

月森はまるで何処かの詞を読み上げているかのように。酷く悲しい声音で告げた。俺は月森を見た。

あれ…なんかそれ。

「なんか…お前に似てる」
「…え?」

月森はきょとんとした顔で俺を見た。
俺はそのまま続ける。

「…月森も"飛べない鳥"」
「…陽介?」


月森も同じ。俺と同じなのに。

"親"という存在があって

俺達と共に…羽ばたけない俺達と共に…飛べない。

だって俺達は一年だけ。
同じでいられるんだ。

例え月森が帰ったとしても、もう会えないわけではない。でも。

今は

俺は田舎に居て。
お前も田舎に居て。

一年経ったら

俺は田舎に居て。
お前は都会に帰る。

もう…同じじゃない。


お前は…"飛べない鳥"
羽は在れど"飛べない鳥"

…"飛べない鳥"

「でもさ、俺は」
「…ん?」

「俺はお前が飛べないのなら…俺は羽ばたかずにお前と一緒に地面を歩くから…お前を置いてはいかないから…」


そう、俺はお前と対等で
隣に居たいんだ。


「ありがとう陽介」

「…よし、勉強!」







昔々…あるところに。
一羽の銀色の"飛べない鳥"が居ました。

彼は考えました。

"自分も同じ鳥なのに、何故飛べないの?"

"僕の羽は何のために在るの?"

"僕は皆と同じなのに。僕は皆と…何が違うというの?"

彼は考えました。
必死に考えた"飛べない鳥"に……答えは出ませんでした。

ある日、鳥たちの引っ越しがありました。
皆、思い思いに羽を広げて力強く飛んでいきます。

だけど"飛べない鳥"はひとり地面を歩きます。
皆、"飛べない鳥"をすぐに追い越して空に消えていきます。

それでも"飛べない鳥"は歩きます。

…そこへ。
一羽のオレンジ色の鳥がすぐそばに降り立ちました。その鳥は"飛べない鳥"の横に並んで一緒に歩き出しました。

"飛べない鳥"は聞きます。

"何故君は、飛べるのに羽を畳んで僕の横を歩くの?どうして?"

するともう一羽は笑顔で答えます。

"偶々だよ。僕もたまにはのんびり地面を歩きたいな"と。

"仲間なんだから、僕は君と同じで居たいんだ"

"飛べない鳥"は言いました

…ありがとうと。


you don't flying bird?
you can flying bird?




"飛べない鳥"って一体どんな気分で飛べる鳥を見ているのだろう。
管理人のちょっとした疑問から生まれました。


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