ペルソナ4 小説

□ダンジョンデートにて
1ページ/1ページ

夜空に浮かぶ月の光を霧が包む

†††††††

「行け!ジライヤ!」

何時ものように、ヘッドフォンから聴こえる曲に乗って唱えながら頭上に浮かんだカードを破壊すれば、自分のペルソナがガル系スキルを放つ。

相手は三体。

一匹はガル系が弱点。

もう二匹はジオ系。

相性があまりよくない。

PTは…俺と相棒の二人。
他にはいない。




ガル系に弱いシャドウはジライヤのスキルが直撃して、体勢を崩した。

そして俺の1more。

さて、どうするか。
例えば…これで普通に攻撃したとしても相手が二度ジオ系スキルを使用したら、俺に勝ち目はない。

このまま悩んでも仕方ない。
とりあえず、相性がい い一匹を倒すことに専念した。

「はっ!」

俺は一匹に風の嵐を巻き起こした。

そして、撃破。

相棒のターン。

相棒はジオ系スキルを持つイザナギを装着して戦法を考える。

そして相棒が攻撃に走る。

青い光に身を包み、メガネを輝かせながら唱える。

「イザナギ!」

目の前に舞い降りてきたカードを拳で破壊する姿はいつみても見惚れる格好良さ。

パリーン!


硝子が割れるような音と共に現れるイザナギ。

そして……

ズガガガン!!

凄まじい電撃の嵐は一瞬でシャドウを飲み込み、舞い上がった煙が退けたらもうそこにはシャドウの姿はなかった。

†††††††

今日、ダンジョンに入る前に決めていたノルマを達成し休 憩をしていた。

「な、相棒…何で俺と二人で来たんだ?」

そう純粋に聞けば、綺麗な唇が三日月のように意地悪に歪めば相棒は喋った。

「陽介とデート。ここなら誰にも見られないしね。」

「ちょ、ば、馬鹿////」

何を申すか、月森さん!

恥ずかしさのあまり顔に熱が集まる。

「あ、陽介が赤くなってる」

「気のせいです。うん///」

と、言っておこう。


目の前に広がる、赤と黒しかない不気味な空を見上げる。

相棒に初めて出会ってからもう数ヶ月が過ぎた。

早いよな。

「そういえば…一年だけなんだよな。」

「え?」

ついつい、口から漏れた言葉を"なんでもない"と済ますのは流石に無理なので恐る恐る声にしていく。

「…相棒がいられるのは…一緒に遊べるのは一年だけなんだよな…ってさ」

「陽介…」


そう考えると胸が締め付けられて苦しくなって、泣きたくなる。

「…そうだ…な」

静かな声音で呟く相棒の声は俺の耳に入って鼓膜を震わす。

「相棒…こんなこと言っちゃいけないんだけどさ……俺っぅ!?」

少しの間。
俺が言葉を繋げる前に俺は…

「ぁ…相棒?」

「陽介…っ」

相棒の腕のなかにいた。
あのいつの日かの河川敷でしてもらった時より若干乱暴に抱きしめられた。

相棒の…俺の好きな匂いがする。

自然と落ち着く匂い。

トクントクン、と普段より早めの相棒の鼓動が聞こえてくる。

「あ、相棒…俺…俺は、お前に行って欲しくない… よ」

馬鹿…なんで…

「行くなよ…相棒っ!!」














泣くなよ。









泣きたいのは相棒の方だろう?







苦しいのは相棒の方だろう?










声が震えて情けない。
次々と涙がこぼれ落ちて、嗚咽も喉の奥から沸き上がってきてもうどうしようもない。


「陽介………俺も…」


今にも消えてしまいそうな声で、こっちも情けない声で相棒はぼつりぽつりと声を出す。





「俺も…行きたくないよ…!」






ポタリ――――。




上から落ちてきた熱い涙が俺の頬に落ちて、滑っていく。

泣いてるのか?

なあ相棒…






ゆっくりといままで垂らしていた両腕で震える大きな背中を抱きしめる。

滅多に感情を表に出さない相棒がこんなになるなんて。

グスッ、グスンッ

とお互いの鼻の啜る音。






温かい。




このぬくもりが俺から離れていくなんて、考えられないよ。





居てよ。


俺の傍に居てよ。



消えないで。



離れないで。








大好きだから…。






end




[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ