ペルソナ4 小説
□君の良い処
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「なぁ月森」
「ん、どうした?」
ふ、と目の前にいる月森に話しかけてみた。
「あのさ…俺………」
拳をぐっと握って云う。
「モテたいんだけど」
「ぶふっ!!!!」
そう一言云うと、目の前の相棒は思い切り噴いた。
「ちょ、な、なんでそこで噴くんデスカ、月森さん!!」
「い、いや…ごめん…w」
失礼しちゃうわ!
お母さん悲し!!!
「陽介、いきなりどうしたんだ?」
「いや、さ。お前…モテるなって思って…どうやったらそんなにモテるのかなってさ?男がモテたいなんて云うのは当たり前だろ?」
「いや、確かにそうだけど…余りにも唐突過ぎて…ぷ…」
「笑うなって///」
しばらく腹を押さえて笑ったあと、月森は真剣な顔で考え始めた。
「モテたい…か。でも俺…モテないぞ?」
「いや、だってお前…前の期末テストの後に下駄箱にラブレターが入ってたじゃないか!それに前、りせちーとデートしてたし、天城とも…あ、ヤベ…何か悲しくなってきた…」
「それは…友達として付き合ってるだけで…///」
顔を赤くしておろおろする月森。
可愛いなチキショー
「それが羨ましいんだって!俺、もう高2だぜ?俺だって甘酸っぱい青春を堪能したいお年頃なんです!うがぁぁあ!」
と、云うことで。
第一回モテ男講座を開きます。
講師は月森孝介。
生徒は花村陽介なり!
「先生!宜しくお願いしまっす!」
「先生って…えーっと……モテる為に必要なことは…」
月森先生は一瞬考えると、俺に人差し指を立てて見せた。
「"優しさ"だ!…多分」
「おぉ!優しさっすか!じゃあ具体的にどんな優しさが必要なんすか!」
「え…さりげない…優しさとかかな…多分。」
…先生、多分をつけないでくださいよ
「優しさ…か。」
一応、心がけてるんだけどなぁ。
「てか、本当にいきなりどうしたんだ?好きな人でも出来たの?」
考え込む俺の顔を見つめながら月森が聞いてくる。
「なんか…恋…したいなぁ…なんて…ごめんな。そんなことしてる場合じゃないのはわかってる。…事件もまだ解決してないしさ。でも最近そればっかりで…その…」
「疲れたんだろ?」
「え…」
俺の言葉を繋げたその月森の声は優しくて…驚いた。
こんなこと、こんな甘ったれたこと言ったら絶対に怒られると思ってた
でも…違かった。
「陽介は…頑張ってる。…いいと思う。人との付き合いも大切だって…言ってたから…陽介の好きにしていいと思う。」
優しく、全てを抱擁するような月森の気持ちに俺は心が温かくなるのを感じた。
「サンキュー…月森。優しいな…お前…あーあ。だからお前はモテるんだな…それに比べて俺は…優しくないし、かっこよくもないし、なんも取り柄ねーし…」
ギシッ、と軋む椅子の背もたれにさらに体重をかけて、首の後ろに両腕を交差させて頭を乗せる。
「そんなことない。陽介は…俺に無いものを沢山持ってる。…明るいし人懐っこくて…一緒にいて楽しい。俺は陽介のそういうとこが羨ましいと何度思ったことか…」
「月森………へへっ///」
少し照れくさかったけど、月森に褒められて嬉しくなって…こんな俺にもいいところがあるんだなって…少し、自分に自信を持てた気がした。
俺は目の前で笑う月森の頭をくしゃくしゃと撫で回した。