ペルソナ4 小説

□哀しみの花
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何故…何故先輩は死ななくてはならなかったのだろう。

何かした?

誰かを傷つけた?


どうして?

あんなに優しかった先輩は居なくなってしまったんだ。

わからない。

何もわからない。


†††††

「いらっしゃいませ〜」

何時ものようにジュネスでバイトを行う。

今日は…小西先輩と同じバイトの時間で。

何時もなら貴女がいるのに。

貴女は居ない。

もう二度と貴女は来ない。


いくら辺りを見渡しても目に入ることはない貴女。

ふ、と気がつけば貴女を目で探す俺に俺は溜め息をついた。


もう貴女はいない。

もう俺を"花ちゃん"と呼んでくれる貴女はいない。

俺に"ウザい"と云いながら笑う貴女はいない。

ぎゅっ……。

俺は気がついたら、エプロンの裾を握り締めていた。

なんだよ…なんだってんだよ。

俺は何時まで貴女を追い続けているんだ。





もう、無理なものは無理なんだ。

もう二度と……。



つぅ…―――――。
「ッ!?」

突然伝った熱い何かに驚いて其れを拭う。

すると大量に拭った手の甲についた"涙"をみてギョッとする。

もう涙は流し尽くした筈なのに。

そう思った矢先、涙が止めどなく流れ落ちてくる。

嫌だ…こんなの。

俺はこんなの見られたく無くてその場からトイレに駆け込んで、個室に入った。

「ッ…ふ…ぁぅ…ぅ!」

拭っても拭っても、溢れ、落ちて行く涙。

胸が熱くて締め付けられて苦しくなって、また泣きたくなって。

次第に嗚咽は大きくなっていく。

「な、で…ぅぐっ、小西せんぱ…!」

大好きな小西先輩。

先輩が遺体で見つかる前に"マヨナカテレビ"に映ったもがき苦しむ小西先輩。

俺はそれに気付くも、助けることは出来なかった。

なにもしないまま、貴女は亡くなった。

「ぐ、くそ…ぉ…」

何も出来なかった俺は、自分の非力さに嫌気がさして…

何度己を呪ったことか。

何度泣いたことか。

何度貴女の名前を呼んだことか。

俺はどうすればよかった?

どうしていれば貴女は死なずに済んだんだ?

くしゃり、と髪の毛を掻き乱す。




還ってきてよ、先輩。

また笑ってよ、先輩。

伝えたいことが山程あるんだよ先輩。

ごめんね、先輩。

ありがとう、先輩。





先輩、先輩…小西先輩…。


"花ちゃん"




先輩の声が聞きたい。


嗚呼…嘆き悲しむ俺は弱い…。

でも、どうしたらいいかなんて今の俺には分からない。

俺は弱いから。

独りじゃなにも出来ないから。

臆病で無力で非力で弱くて。

駄目な俺。




コンコン…―――――。

その時、叩かれた個室のドア。

「陽介…?」

そして聞こえた相棒の声。

「大丈夫?具合、悪い?」

心配してくれる相棒。

俺はその相棒の気持ちに胸が温かくなるのを感じた。

「……なぁ、相棒」

ふと話し掛ける。

「ん?」

「俺は…俺は居なくなった小西先輩に何が出来る?」

そうドア一枚の先にいる相棒に問う。

そして少し間が開いて。

相棒は口を開いた。

「闘うことが出来る。事件を解決することが出来る。…この事件を止めて犯人を捕まえれば…先輩をやっと、救えると思う。」

俺は…闘える。

そうか…俺は闘えるんだ。

俺は犯人を捕まえれば…小西先輩を…救えるんだ。

「…こんな俺にも出来ること…あるんだな…こんな弱くて駄目な俺にも…」

「陽介は弱くない。…だって、戦ってるじゃないか。危険を一緒に乗り越えてるじゃないか…。陽介は強いよ。だから」</

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