□生贄
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「こりゃだめだ
みんな枯れちまってる」

「水をひこうにも川が半分以上枯れちまってて、どうしようもねえな」

「やっぱりあれしかねえかな」

「そうだな」

「かわいそうだが、仕方がねえ」

「あぁこのままじゃ村中みんな飢え死にしちまう」

村ではもう20日も雨がふらなかった
村の作物は枯れ、みな困り果てているので村の庄屋が巫女をよび祈祷してもらったところ
龍神さまを大切にしなかったせいでお怒りになり雨を降らせてくれないと出たそうだ
龍神さまの怒りを沈めるために祠をたてお祀りし生贄を捧げろと巫女は告げたそうだ


「わぁきれい
ほんまにこれ着せてもらえるの」

「そうよ
ゆきちゃんのために旦那さまが買ってきてくれたのよ」

「…うれしい」

雪輪模様の中に四季の花々、手毬などが描かれた赤いかわいらしい着物を見てゆきはとてもうれしそうだった

龍神さまの生贄にゆきが選ばれた
ゆきは庄屋の息子が、女中であったゆきの母を手篭めにし生まれた子だ
ゆきの母は産後の日だちが悪く、ゆきを産んですぐに死んでしまった
引け目もあったのか、ゆきはそのまま庄屋の下働きとして置いてもらっている

「お風呂も入ってきれいになったし、さっそく着ましょうね」

「うん!」

なにも知らずに喜ぶゆきを、お菊は不憫に思った
生まれてすぐ母をなくし、食事や着る物などは与えてもらえても粗末な物で
ことあるごとに庄屋の息子から折檻され、そのうえ龍神さまへの生贄にされる
まだ六つの小さな子どもなのに
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