その他CPのお部屋
□Brand new day
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何万人という観客が固唾を飲んで見守る中、手に汗を握りながらスタート地点に佇むその姿を眺める。
そこにはいつもの少しおどけたような様子はどこにもみられない。
スクリーンに映し出される表情は真剣そのもの。
その視線はまっすぐゴールだけを見据えている。
ズラリと並ぶのはいずれも予選を勝ち抜いてきた強豪達。
最後のこの一戦で真のナンバーワンは決まる。
金メダル候補として名が上がっている選手には以前の大会では敗れている。
今大会でも誰もが彼の勝利を信じていた。
『一度だけ勝たせて欲しい』
競技前のインタビューでの何気ないコメント。
だけど俺はその言葉を聞いた時、ドキリとした。
その言葉の持つ本当の意味が、俺には、俺だけには分かるからだ。
それは三日前のこと。
練習が終わった夜のレッスン室。
珍しく最後まで残っていたバロと二人、宿舎へ帰る身支度をしていた時のことだった。