ご夫婦の部屋
□パパラッチ
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「ジニョンア…?何やってんの、そんなとこで。」
階段の踊り場で息を潜めてしゃがんでいると、背後から声がして、振り向くと、シヌがいぶかしげに俺を見下ろしていた。
「あ…シヌか、びっくりした。」
「それはこっちの台詞だよ、しかもその格好…なに?」
シヌが俺の全身を上からジロジロと眺めて、眉を潜める。
シヌが驚くのも無理はない。
普段はあまり着ないパジャマ姿(しかも可愛い感じの)に、それに全く似つかわしくないサングラスをかけ、髪をてっぺんで角のように縛り上げた滑稽な出で立ちで、今夜の宿泊先であるホテルの、しかも踊り場でしゃがみこんでるんだから、客観的に見れば怪しいとしか言い様がないだろう。
「もうすぐ、バロとサンドゥルが帰ってくると思うんだ、だから驚かせてやろうと思って。」
小腹が空いたと言ってバロとサンドゥルが近くのコンビニに買い出しに出掛けたのを見計らって、俺はそそくさとドッキリの準備に取り掛かかり、ここで二人が戻ってくるのを待っていた。
そう説明すると、シヌはいつものように眉を下げて苦笑する。
「お前、ホント好きだね。でもそれ、他人が見たらただの不審者だよ。」
「大丈夫だよ、このフロアには俺たちの関係者しか宿泊してないって聞いたから。さっき通りかかったマネヒョンとスタイリストヌナも驚かせてやったんだ。二人ともビックリして飛び上がって、マネヒョンなんかそのまま尻餅ついちゃってさー、すっげー可笑しかった。シヌにも見せてやりたかったよ。」
思い出してケラケラ笑ってる俺に、シヌは悪趣味だと言わんばかりに呆れ顔を向けてくるけど、こればっかりは生き甲斐みたいなものだからやめられない。
そうこうしていると、エレベーターの作動音がして、慌てて身を隠す。
「帰ってきた、きっとアイツらだ。…ほら、何してんの、シヌも隠れて!」
ぼんやりと突っ立ってるシヌの腕を引いて、強引にしゃがませる。
エレベーターの扉が開いた音がして、聞き慣れた声が廊下に響いた。
バロとサンドゥルだ。
まだここからは少し距離はあるけど、サンドゥルは声が大きいからすぐ分かる。
俺は出るタイミングを見計らうために、近づいてくる二人の会話にジッと耳を傾け、気付かれないよう物陰からそっとその様子を眺めることにした。