ご夫婦の部屋
□パパラッチ
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「……驚かせるんじゃなかったの?」
隣のシヌがポツリと尋ねてくる。
「……出て行けると思う?さっきの、あの雰囲気で。」
「いや。」
シヌが静かに首を振った。
「シヌ…俺、結構衝撃受けてるんだけど。」
「ん?」
「なんか、ちょっとショックというか、妙な気分というか。なんていうか例えるなら…」
「親同士のラブシーン見ちゃった感覚?」
「そう、それ!……って、シヌあるの?」
「いや、ないけど。イメージ。」
「俺もないけど。……つか、前もこの逆パターンあったよね、俺たちのが見られちゃってさ。」
「ああ、あの、俺たちの関係バレちゃったやつね。」
あの時もホテルだった。
同室だった俺とシヌの部屋に、バロとサンドゥルが驚かせようと隠れてて。
何も知らない俺たちがイチャイチャしてたら、突然二人してクローゼットから転がり出してきて、あの時は心臓が止まるかと思った。
すったもんだで、アイツらも実はそういう関係だって打ち明けられて本当に驚いたっけ。
サンドゥルに関係がなかなか進展しないことを相談されたりもして。
まあ、あれから上手くいってるみたいだし、それは兄として喜ばしいことだけど、実際にあーゆうシーンを目の当たりにしてしまうと、正直すごく複雑な心境だ。
意図してやったわけじゃないけど、結果的に盗み見しちゃったわけだし……見ちゃいけないものを見ちゃった罪悪感というか。
出来れば見たくなかったというか。
「まあ、あれだな、因果応報ってやつだよ。アイツらは俺たちにしたことがそのまま自分たちに返ってきたんだよ。」
だから俺たちは悪くない、と、言い聞かせるようにシヌが俺の肩に手を置いた。
「…だよ、な?俺たちだって見られたんだし、これでお互い様だよな、うん。」
「ああ。そして、今のは見なかったことにしよう、綺麗すっぱり記憶から消し去ろう。」
「うん、だな。」
思わぬ場面に出くわしてしまったが、シヌがいてくれて良かった。
一人だったら、どう受け止めていいか分からず、悶々としてしまっていただろう。
「なんか今のでどっと疲れた。俺、部屋戻る。」
「ドッキリはもういいの?」
「そんな気分じゃなくなっちゃったよ。シヌは?」
「俺も戻るよ。」