短編
□一目惚れ
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あの日...
忘れもしない日
あなたに一目惚れしました。
***
――入学して少したった頃の月曜。
月曜と言えば恒例の朝礼があるわけでして。どうせ校長先生の話、なげぇんだろーなぁ。何分ぐらいかな。体力保つかなぁ。なんて思いながら自分のクラスの列に並んで朝礼の時間を待っていた。
あと5分で始まるなぁ、と思ってると
突然、空から大きな声が聞こえたの。
周りがざわめいて空を見上げたら、屋上の柵に仁王立ちして声を張り上げる男子が――。
***
噂によると、あれは男子バスケットボール部の部員らしい。
何か恒例なんだとか。
あんなことするなんて...どんな部活なのかな、という好奇心で部活(体育館)を覗いてみた。
なんというか...皆がすごく煌めいてて、言葉が出なかった。うん。ホント言葉が出なかいの。
魅了されながら入り口で眺めてると後ろから声をかけられた。
「...どうしたの?部活に何か用?」
びくっとしながら振り向くと、汗だくでボールを抱えている男子が目にはいった。
そして
"一目惚れをした。"
***
でもあの人、朝礼の時はいなかったなぁ
...というか朝礼の時一人の叫びしか聞いてないし見てないけど。
私は彼を見るため、放課後はいつも体育館へ除きにいく。
そして今日も...
「....あの」
『はっ!!!!?』
突然、横から声をかけられ、見てみるとそこには水色の透き通った髪をした男子がいつの間にか立っていた。
...しかしホントに気付かなかった。ボールを持ってるということはやはりバスケ部なのだろう。
「君、いつも来てますよね。バスケ、好きなんですか?」
『...えっと....』
言えるわけないじゃないですか。好きな人を見るためにとか、ストーカー?みたいな。
何も言えずに黙っていると、ふと男子が笑った気がした。
「冗談です。理由、わかってますよ。僕の趣味は人間観察なので」
『...そうなんで....え?』
あれ?今、この人、何て?
そして、体育館の中を指差しながら
「彼をいつも見に来ているんですよね?」
と、言ってきた。
『......ぃっ、いやああああああああ!!!!!!!!違います!違うんです!あっ、いやっ!.....っ!』
さ、ささ、最悪...
バレてる!
この人何者!?
「大丈夫ですよ。あ、君名前なんですか?」
...あ、あれ?
なんかめっちゃこの人冷静なんですけど。
『苗字...名前...です』
「わかりました。ありがとうございます。それでは」
名前を教えると、
彼はいつのまにか隣から消えていた。
あれ...?
ま、まさか幽霊....?
***
「降旗くん」
「っ!?...あ、黒子か。もう毎回やめろよそういうの...」
「(...わざとじゃないんですが...)名前、聞いてきましたよ?」
「!!ま、まじ?」
「はい、まじです」
そういって、名前を教えてあげると「やっぱり名前も可愛いなぁ...」って顔を真っ赤にしながら笑顔になった。
名前もしらない初対面の人に恋に落ちるとかどかの少女漫画ですか。
なんて言ってやろうと思ったけど、彼が幸せそうなのでやめておいた。
「あの日からずっと苗字さんのこと見てましたもんね」
「わっ!!?ばっ、言うなよ!!」
「告白、すればいいじゃないですか」
「こっ....!?」
告白という言葉にまたもや顔を真っ赤にしさせた。ほんとピュアですね、とまた言ってやろうかと思ったけどやめた
降旗くんは真っ赤だけど、どこか寂しそうな顔で俯き、ぼそっと呟いた
「むっ、無理だよ....第一あの子...苗字..さん、いつも見に来てるから...この部に好きな人がいると思うし...。先輩とか皆かっこいいし...火神だってかっこいいし...俺なんか...わっ!?」
降旗くんの周りに先輩達が近寄ってきて、背中をバシッと叩かれる
「いっ....あっ、先輩...!」
「バーカ。早くいってこい。ダアホ」
「お前ならイケるって!水戸部も大丈夫だって言ってるよ!」
「ぁ.....っえと......」
先輩達が勇気づけてあげると、少し戸惑ったようにも見えたけど
「..ゎ...わかりました....!」
と言って体育館の入り口へ...彼女のもとへ歩いていった。
その背中を見守ると、先輩達から大きな溜め息が聞こえた。
「うーん、しっかし...一目惚れかぁ〜。なんかいいね!」
「部活より彼女を優先したら殺す...」
「日向〜、スイッチ入ってるよ」
なんてぽろぽろ喋りだす。
でも...
よかったですね。
ずっと見てましたからね。
お互い。
入り口で話し合ってる二人の顔がとても真っ赤で、いいネタ見つけたなんて考えたのは
内緒ですけどね。
*end