短編
□隙
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『太子ーっ!...ったくもー、どこ行ったのー!』
太子を探してバタバタと廊下を走り回る君。怒ってる姿も、僕にはとても可愛く見える
今日も太子の「外交は嫌だ!」という我が儘にに振り回されているねだろう。
でもそんな太子に一生懸命にならなくてもいいのに...、太子の傍にずっといなくてもいいのに...、なんでそんなに太子のために頑張るの?ねぇ、名前さん...
僕...
『あ!妹子ちゃん!』
「えっ?」
ボーっとしていると、どうやら僕の存在に気付いたのか、僕の方へと歩み寄る。
『丁度よかった!ねっ、太子知らない?またどっか行っちゃって...』
あのカレー野郎、名前さんに迷惑かけすぎだろ!こんなに必死になって探してるんだよ、羨まし...じゃなくて!と、とりあえず最低だ!アホ太子!
「...名前さん、何もそこまで太子に必死にならなくても...」
『....え?』
「誰から命令されたわけでもないですし...無理してまで太子の傍にいなくてもいいんですよ?」
『妹子ちゃん?』
「太子がいつも迷惑かけてすいません...太子にはもう迷惑かけるなって言っておき...」
『妹子ちゃん』
ついむきになってしまい、一人でボロボロしゃべっていたところ、名前さんが言葉を被せてきた。
その時の名前さんの顔は...
まるで天使のような、
優しい笑みだった。
『妹子ちゃん、私ね、別に迷惑だなんて思ってないよ?』
「...え?」
『確かに、駄々こねたりめんどくさいけど、無邪気に笑う太子の笑顔が...好きなの...。笑顔を見るため太子の傍にいたけど、傍にいればいるほど...太子のことが好きになっちゃって....って、何言ってんだろ私...//』
.....これは夢だろうか...
いや、夢でいてほしい...
名前さんはずっと太子が....
太子が好きだから.....
その時丁度、太子がどこからか走ってこちらに向かってきた。
「名前!こんなところにいたのか!」
『あ!太子!それはこっちの台詞だよ!外交ほったらかして何...ッ!?』
「外交は後!とりあえずお腹が空いたからご飯を作るでおま!」
『ふふっ...もー仕方ないなぁ..』
太子は名前さんの手を引き、部屋へと戻っていった。
「今日は"牛肉カレー太子おにぎり"を作るでおまー」
『あっはっは、何それー!りょーかいしましたーっ♪』
名前さんの手をつかめるのは
僕でなく太子しかできないんだ。
名前さんの笑顔を独り占めできるのも
僕でなく太子しかできない。
ねぇ、名前さん...
僕...
あなたが好きなんだ
なのにどうして?
どうして僕じゃだめなんだよ....
『....くそっ....!』
夕焼けの日差しが
手を繋ぐ二人を照らし出す
僕が入る隙は
一ミリも無かったようだ
†end